
荒ぶるスサノヲ、七変化―“中世神話”の世界 (歴史文化ライブラリー)
日本神話の英雄「スサノヲ」の時代ごとの変貌ぶり。ユニークな中世神話の世界は面白い!
日本神話のヒーロー「スサノヲ」のエピソードが、時代によってどう変化していったのかを読み解いた一冊。
著者の斎藤英喜先生は、『古事記 不思議な1300年史』(紹介記事)、『読み替えられた日本神話』(紹介記事)など、奇怪な中世神話の世界の専門家で、とても興味深い世界を教えてくれます。本書もとても読み応えがありました!
説明文:「古代神が仏教と習合し、新しい「神」となる中世神話世界。異国神との合体や閻魔大王への変貌など、パワフルに姿を変え成長するスサノヲの魅力に迫り、近代のイデオロギーとは違う、底深い日本の宗教文化を読み解く。」
黄泉の国から地上へ戻ったイザナギが禊をしたところ、鼻から誕生したのが、日本神話で最大のトリックスター「スサノヲ」です。母に会いたいと泣き叫び、姉・アマテラスの支配する国でも大暴れし、出雲の国へ追放。しかし、ここから急に真っ当なヒーロっぽく変化し、大蛇からクシナダヒメを守り、平和な国を築きます。やがては根の国に住まい、地底の支配者に。
これは基本的に古事記の記述によるものですが、禊のシーンは日本書紀には登場しなかったり、風土記に違ったエピソードが語られたり、スサノヲ像は一筋縄ではいきません。中世には出雲大社の御祭神は、現在のようなオオクニヌシではなく、スサノヲと考えられていたというのですから驚きです。
さらに、日本の中世には、古代神話を読み解くだけではなく、オリジナルの解釈を加えて新たな神話世界を作るという試みがなされていました(中世神話)。現代ではとても考えられないことですが、それが神話を理解する方法と信じられてきたのです。
そんな方たちにとて、様々な性格を持ち、変幻自在に思えるスサノヲは、格好の研究対象でした。地下へもぐったことから閻魔大王と同一視されたりするのはもちろん、様々な神や仏と同一視され、イメージがどんどん肥大化していきます。
また、粗末に扱うと祟りを引き起こす、やっかいな行疫神として扱われ、京都・八坂神社(かつての祇園社)の牛頭天王と同一視されます。さらには、異国の神である、盤古神、新羅明神・赤山明神・摩多羅神などとも集合するなど、まさに「厄介な神はすべてスサノヲ」というような感すらあったとか。
本書では、そんなスサノヲ像の変化の流れを読み取っていますが、やはり中世神話の世界は奇想天外で面白いですね。偽書やトンデモ本と言っても差し支えないような内容もあり、「スサノヲはアマテラスの養子になった」といった記述があったり、悪神から改心して良い神になったりします。
日本神話に興味がある方は、斉藤先生のご著書はきっと楽しめると思います。ぜひ手にとってみてください!
<自分メモ>出雲大社の周辺の鰐淵寺、日御碕(ひのみさき)神社などが、スサノヲを理解する鍵となるようですので調べてみます。