
はじめての日本神話『古事記』を読みとく (ちくまプリマー新書)
前半は古事記のあらすじを、後半はその読み方や特徴を。語源などから読み解きます
古事記のあらすじと読み方を解説する、新書版の作品。古事記編纂1300年イヤーだった2012年の締めくくりに、奈良県が優れた古事記関連書籍を表彰する「古事記出版大賞」という企画がありましたが、そこで島根・宮崎両県にゆかりの本を選ぶ「しまね古代出雲賞」に選ばれています。
第一部では、80ページくらいの駆け足で古事記のあらすじを紹介し、第二部(100ページほど)でその読み方や特徴を解説していきます。
説明文:「神話はたんなるファンタジーではない。なぜ古代の人々が見えない神々の世界を想像したのか、“自然”と“人間”の接点を舞台に読みとく。『古事記』の全容がわかる、あらすじ紹介つき。」
第一部のあらすじは、登場人物の名前は複雑で覚えやすいものではありませんし、限られた誌面で上中下巻のすべてを網羅するのですから、やや消化不良な感はありました。初心者の方がこれを読んですぐに理解するのは難しいかもしれませんが、どこかで聞いた話があるとか、神々も意外と人間くさいんだとか、親しみを感じてもらう役に立つでしょう。
第二部からは、古事記を読み解く作業に入っていきます。項目を見ると、「最初の出会い─水と生命がまじわる場所」「箸と橋と柱─天と地をつなぐ場所」「大地の母胎─死と再生の場所」「<食べる>体─内なる自然」などがあります。
例えば、箸と橋と柱の語源が同じであるという推測から、古代の日本人の思考パターンなどを読み解いていくのですが、これが面白いですね。あまり学術的になりすぎない程度に分かりやすく掘り下げていますので、思わず引きこまれました。この読み解き方は他の章でも同様で、草木の「実」、肉や魚の「身」、人間の「身」は区別されなかったというところから出発して、古事記を物語を読み直しています。
古事記の初心者の方にはやや薦めづらいですが、こういったアングルから見なおしてみるのは、私にとって新鮮でした。また時間が経ったら再読してみたいですね!