
ニッポン西遊記 古事記編
女優・鶴田真由さんが全国の古事記ゆかりの地を巡り歩いたエッセイ集。読みやすい一冊です
女優・鶴田真由さんが、日本全国の古事記ゆかりの地を巡り歩いたエッセイ集。雑誌「Discover Japan」の連載だったようで、国生み・天岩戸開き・国譲り・天孫降臨・海幸彦と山幸彦の兄弟喧嘩・神武東征と、丁寧に日本各地をめぐっています。私自身もそれなりに辿って来ましたが、まだまだ行っていないところも多く、羨ましがりながら読了しました。
説明文:「女優・鶴田真由が、神々の導きを得て、古事記ゆかりの土地を巡りました。行く先々で出会った不思議な体験とは? 神様の存在を感じる一冊。女優・鶴田真由が、古事記をたどる旅をしようと決めた途端、神様のお導きのように、いろんな出会いやチャンスに恵まれた。「今後の世界を導くヒント(=教典)が、ここニッポンにあるはずだ! 」という思いで著者のもとに集まったのは、孫悟空に似たコンセプター、猪八戒に似たプロデューサー、沙悟浄に似たカメラマン。行く先々で、虹が現れたり、光が差し込んできたり、突然雨が止んだり、龍神の姿が見えたり……など、次々と不思議な体験をする。行く先々で神様の存在を感じた"古事記の旅"とはどんなものだったのか。古事記をひもときながら、珍道中と不思議な体験をつづったエッセイ。」
淡路島・宮崎・長野・出雲・伊勢・高千穂・熊野など、順番にたどっていく鶴田さんご一行ですが、鶴田さんご自身は古事記の知識は入っているものの、特にそれほど詳しというわけではなさそうです。
また、パワースポットという言葉に反応しながらも、決してそればかりに偏らないので読みやすい面もありました。しかし、旅先でとあるニュースを見たりすることに反応し、「これは導かれてる!宿命だ!」と喜ぶというような描写が何度も登場するのは、好き嫌いが分かれるところでしょう。
ただ、とても日程の制限もありながらも、とても丁寧に各地を回っていらっしゃいますから、「どこどこへ行ってみたい」と思わせるだけの熱量は感じられます。いい年をしたおっさんが旅心を刺激されているんですから、難しいこと抜きにして、こうした熱気が伝わってくるということは大切ですよね。
古事記の入門書を数冊読んだような方には、とても楽しく読める旅行記でしょう。写真がわずかにしか使用されていないのは不満ですが、不思議なパワーが感じられる古の土地へ導いてくれる一冊でした。
最後にメモ代わりに。「天の岩戸は高千穂から戸隠へ飛ばされた」という言われていますが、長野の戸隠神社では「天岩戸は天界にあったので、戸隠ではそのように解釈はしていないのです。」と言われたそうです。なるほど。