
読み替えられた日本神話 (講談社現代新書)
トンデモ化していった中世日本紀など、日本神話の読まれ方を概略した一冊。面白いです!
日本神話のスタンダードであった「日本書紀」と、18世紀の本居宣長の登場まで忘れられかけていた存在だった「古事記」。これらの書が中世などには大きく内容を変え、様々な亜種が登場していたことはあまり知られていません。タイトルの通り、「読み替えられ」てきた歴史をたどった一冊です。
この本は2006年発売の新書版です。著者の斎藤英喜さんは、2012年に『古事記 不思議な1300年史』という本を書いていらっしゃいますが、この本が眼から鱗で驚きの連続だったため、同じテーマの本も遡って読んでみました。内容も近いものがありますし、こちらもとても面白く読了しました!
説明文:「神様って、こんなにアバウトでこんなに面白い!アマテラスが蛇になり、安徳帝がヤマタノオロチに姿を変え、イザナギ・イザナミからアダムとエバが生まれ、「天皇即位の秘儀」が封印され、ナウシカが現代の神話となるまでの奇想天外、神々の変貌!『古事記』から『もののけ姫』まで時代に改変された神話の千三百年史。」
漢文体で書かれた日本書紀は、海外のスタンダードも意識した内容だったのに対し、古事記には、漢字を使いながらローカルな倭言葉の音声を重視した訛りを取り入れた文体だったとか。このため、貴族たちが歴史を学ぶのに使用するのは常に日本書紀であり、古事記はずっとサブテキスト扱いだったそうです。
平安時代になると、日本書紀を複数人で読む「日本紀講」が催され、研究が進みますが、次第に偽作された歴史書が登場したり、読み手の都合のいいように内容を読み替えたりすることが横行していきます。ここで詳しい流れまでは書きませんが、中世になると一気にトンデモ化していくんですね。
●記紀には登場しない「第六天魔王」が現れて、あろうことかアマテラスと密約を交わしている
●その影響でアマテラスは「嘘つきな神」と見られていた
●伊勢神宮の外宮に祀られるトヨウケ神の経歴や正体が書き換えられている
●現在とはまったく違った形で神仏習合していた
●オオクニヌシは冥界の王として祀られた
など、現在では考えられないような姿だった時代もあったのです。もちろん、それぞれ意図があって変化していくのですが、色んな驚きがありますね。古事記や日本書紀の意外な歴史が学べます。
本の内容としては、『古事記 不思議な1300年史』に近いので、間違いなく面白いです。こちらは新書版のため中古本もリーズナブルに手に入るようですから、興味がある方はぜひ!