寺社の装飾彫刻―近畿編 京都・滋賀・三重・和歌山・大阪・奈良・兵庫
寺社の彫刻を紹介した写真集『寺社の装飾彫刻』の近畿編。関西でもこんな超絶技巧が!
昨年、偶然手にとってみて、そのあまりの迫力に圧倒された『寺社の装飾彫刻―宮彫り‐壮麗なる超絶技巧を訪ねて』(紹介記事)。江戸時代から神社仏閣の建築装飾として取り入れられるようになった、華やかな「建築彫刻」を集めた渋い写真集ですが、それが好評だったのか、関東編×2冊、中部編に続いて、いよいよ関西編が発売になりました。
社寺の建築彫刻は、時代的なこともあって関東にもっともすごい物が集まっているため、関西編はやや地味な印象も受けますが、比較的近い場所に、これまで注目もしなかった建築彫刻があることに気付かされて、これはこれで面白いですね。
説明文:「奈良・京都を中心に伝統と由緒ある寺社が集まる近畿地方。安土・桃山時代と江戸時代の傑作が共存する京都・滋賀・三重・和歌山・大阪・奈良・兵庫の100寺社。知られざる江戸彫物大工たちの壮麗なる超絶技巧を再発見!!」
この手の建築彫刻は、日光東照宮が造営された江戸初期にピークを迎え、華やかな色彩が用いられるようになり、後の時代には素木の物が増えるのだとか。歴史ある社寺が多い関西では、関東ほどの広まりはなかったものの、丹波の中井家という職人一家の作品が多数遺されているのだそうです。
なお、奈良の社寺の紹介は少なめですが、香芝市・阿日寺本堂の欄間、五條市・落杣御霊神社の華やかな社殿のほか、吉野水分神社、惣社水分神社、金峯山寺などが紹介されています。落杣御霊神社は、つい最近になって彩色保存修理が行われたばかりで、精密な彫刻に鮮やかな色彩が見られるようですので、ぜひお詣りしておきたいですね。
また、個人的なメモになりますが、和歌山市大川の「大川八幡神社本殿」。向拝の雲龍の彫刻が、木鼻部分が龍の前半分で、虹梁側は雲に隠れているという、他ではあまり見られないデザインになっています。これは見てみたいと思います!
奈良県内ではあまり見かけませんが、和歌山や大阪では華やかな建築装飾が見つかる可能性が高いですから、この本をきっかけに着目してみるといいですね。