【書評】まさに超絶技巧！壮麗な『寺社の装飾彫刻』 (by 奈良に住んでみました)

2012-03-12

【書評】まさに超絶技巧！壮麗な『寺社の装飾彫刻』

全国111の寺社から、700枚もの写真で「装飾彫刻」を紹介する写真集『寺社の装飾彫刻―宮彫り‐壮麗なる超絶技巧を訪ねて』。壮麗で華やかな装飾は、関西にいるとあまり目にする機会はありませんので、とても興味深く拝見しました！

信じられない精巧さ！装飾彫刻の世界

寺社の装飾彫刻―宮彫り‐壮麗なる超絶技巧を訪ねて
若林純

日貿出版社 2012-01
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この『寺社の装飾彫刻 - 宮彫り‐壮麗なる超絶技巧を訪ねて』という写真集は、江戸時代から神社仏閣の建築装飾として取り入れられるようになった、華やかな「建築彫刻」を集めたもの。全国111の寺社から、まさに「傑作」と呼ぶに相応しい壮麗な彫刻ばかりが、700枚もの写真で紹介されています。

そもそも、寺社仏閣の建築彫刻は、江戸時代初期、あらゆる装飾技法を駆使した「日光東照宮」が造営されてから幅広く用いられるようになりました。流れとしては、安土桃山時代～江戸初期には華やかな彩色入りのものが、それ以降の質素倹約を求められた時代には素木のものが増えたのだそうです。

しかし、有名な「眠り猫」を彫ったとされる名工・左甚五郎ですら、まだ実在の人物だったのか確定してないのだとか。仏像彫刻と比べて、スポットライトが当たることの少ないジャンルだったそうです。

私のような関西在住の人間にとっては、至近距離に名刹が存在し、古建築も古の仏像も身近に感じています。しかし、このような寺社の華やかすぎるほどの建築装飾や、全く方向性は違いますが、素朴な円空仏などは近くには存在せず、東の方たちを羨むばかりです。十分に憧れの対象になり得るものですね。

『寺社の装飾彫刻 - 宮彫り‐壮麗なる超絶技巧を訪ねて』の表紙。撮影と構成は、カメラマンの若林純さんという方で、神社仏閣の装飾彫刻に魅せられて、全国を撮り歩いているそうです。表紙の写真は、群馬県の雷電神社本殿のもの。日光東照宮はもちろん、関東にはこうした彫刻が多数遺されています

どのページも壮麗な写真が並んでいて、眩さにくらくらしそうです。巻末に寺社彫刻に関する解説と、掲載寺社の一覧がありますが、それ以外は全て写真ページです。本当に贅沢な作りで、「4,500円（税別）」とお値段がはってしまうのも仕方ないところでしょう。それだけの価値はある内容でした

壮麗な装飾彫刻で名高い、埼玉県熊谷市の「妻沼聖天山奥殿」のものも紹介されています。見事の一言！いつか拝見したいと思っています

テイストも色々。軍人さんが彫られたものも

本書に収められている写真を見ていくと、四角四面だったはずの柱が、完全に昇龍になっているなどというのは当然で、板一枚にも丁寧に彫刻が施してあり、まさに「過剰の美」が感じられます。ある意味では病的と思えるような綿密さで、キッチュでサイケデリック。ガウディーの一部の建築物を見ているような気分にさえなりました。

彫刻のテーマも驚くほど様々で、木鼻が獅子や象になっていたり、力神が軒を支えていたりするのはもちろん、中国の「二十四孝」や、日本の昔話、庶民生活などを題材とした絵巻物のような世界も描かれています。さらには、日露戦争当時の軍人を描いたものまであるそうです。驚愕してしまいます！

掲載内容を、簡単に一部だけご紹介しておきます。わざとラフに撮っていますので、見づらいと思いますが、大まかなイメージだけは伝わるでしょう。実際にはこれよりも遥かにすごいですよ！