芳年妖怪百景
明治時代の浮世絵師・月岡芳年の、幽霊や亡霊を描いた絵を集めた作品集。豪華版です!
歌川芳年の弟子であり、明治時代を代表する浮世絵師・月岡芳年が、幽霊や亡霊について描いた作品を集めた作品集。発売は2001年、2枚続・3枚続の作品も折り込みで収録されている豪華本で、お値段は4000円!収録点数は約70点で、巻末に解説が掲載される図録タイプです。
血が滴るような残酷絵を得意としたため「狂気の絵師」「血みどろ芳年」などと呼ばれた方の作品ですが、この作品集にはその手の作品は収録されていません。「新形三十六怪撰」シリーズの全図と、「月百姿」「和漢百物語」などのシリーズの一部、そして生涯の代表作とも言える「奥州安達が原ひとつ家の図」、妖艶な幽霊画「幽霊之図」なども観られます。
説明文:「明治を代表する浮世絵師、月岡芳年(1839~1892)の妖怪画幽霊画をオールカラーで収録した画集。傑作「新形三十六怪撰」の全図ほか全70点。」
月岡芳年の絵は、古典的な浮世絵の枠に収まらず、現代のポスター画に近いテイストも感じますし、アングルや描き方などの個性も発揮されていて、どれを観ても飽きません。何も考えずに絵だけをパラパラッと追っていっても十分に楽しめます。
本書では、幽霊画や妖怪画を集めていますが、基本的には武者がそれを退治するようなものが多く、迫力があります。解説では、その絵がどんな人物や物語に題をとったものなのかが説明されていて、これを追っていくと面白いですね。
当時の人たちにとっては謡曲などで有名な人物が描かれていますが、現代人には馴染みの薄い方も少なくありません。例えば、謡曲「羅生門」「茨木」に登場する、源頼光の四天王の一人・渡辺綱が茨木童子を退治するシーンや、謡曲「道成寺」の安珍と清姫、遊女が一休和尚と出会って悟りを得る「地獄太夫」の話など、画題を調べながら読み進めるとより楽しいですね。
なお、巻末の解説では、何度も「この頃の芳年は精神を病んでいて…」というような記述が出てくるのがすごいですね。今の時代の人に対してであればこんな表現が出来ないだろうとも思いますし、心の病を抱えながらこれだけ高いレベルでの創作活動を続けていたと考えると、ますます迫力があります。
芳年の作品集は多数出版されていますので、本書に限らずぜひ観て欲しいと思います。個人的には別冊太陽の『月岡芳年 幕末・明治を生きた奇才浮世絵師』(紹介記事)あたりがオススメですのでぜひ!