月岡芳年 幕末・明治を生きた奇才浮世絵師 (別冊太陽)
最後の浮世絵師「月岡芳年」の150以上の作品を収録。永久保存版的な充実度です!
幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師・月岡芳年( http://goo.gl/KTRW , http://goo.gl/5JUfC )の作品をまとめた充実の一冊。私はよく「さすがは別冊太陽」というような感想を書きますが、この本はまさにそれ。横長の作品を見せるために折り込みページを入れたりしていますし、計200ページ近いボリュームで、150以上の作品を掲載しています。
このシリーズでは、作家の歩んできた歴史を振り返るページが多くなり、収録作品数的に物足りない感があるものも多いのですが、今号に関してはその手の解説は極端なまでに省かれています。その分だけ多数の作品が紹介されているので、絵師の魅力を知る最初の一冊としても最適でしょう。
月岡芳年は、最後の浮世絵師・最初のイラストレーターなどと呼ばれ、いわゆる「無残絵」という、血のしたたるシーンを描いたシリーズなどが有名になりました。この本では、初期の頃から順番に「通俗西遊記」「英名二十八衆句」「大日本名将鑑」など、シリーズ物ごとに紹介しているため、とても読みやすいですね。ただし、数多くのシリーズを広く網羅することを目指すあまりか、有名な作品が掲載漏れしているのがちょっと残念です(Wikipediaにも掲載されている『奥州安達がはらひとつ家の図』など)。
また、巻末近くに版下絵「看虚百覧怪」が初公開されているのも貴重でしょう。版下絵とは、墨の輪郭線を掘るための最終稿で、通常は残りません。この一連の作品群は、何らかの理由で未出版に終わったため、奇しくもこの世に遺されたのだとか。その価値がどの程度なのかは私には分かりませんが、ファンとしては嬉しいことですね。
同じ作者の作品を、時代別にこれだけの数を見ていくと、年代ごとに技術が格段にアップしているのが伝わってきます。月岡芳年は浮世絵末期の頃の絵師なので、西洋絵画の技法を取り入れたりしていて、今見ても斬新ですね。単純に「かっこいい!」と思えるだけの素晴らしい作品群ですし、その魅力が充分に伝わってくる素晴らしい内容の一冊でした。ぜひ手にとってみてください!