もっと知りたい書聖王羲之の世界 (アート・ビギナーズ・コレクション)
4世紀の書聖「王羲之」。書の魅力・歴史的な観点からの解説で、初心者に最適の入門書
4世紀の中国・東晋時代に生きて、1600年もの間「書聖」として崇められてきた書家「王羲之」(おうぎし。Wikipedia)の作品や生涯について、分かりやすく解説した一冊。
私自身、書の素養はまったくありませんが、テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」を見たり、書道をテーマにした漫画『とめはねっ! 鈴里高校書道部』を読んでいたりするため、王羲之の名前だけは何度も目にしていました。図書館でこの本を見つけてさっそく借りてみましたが、その書の素晴らしさが理解できたとは思えませんが、どんな位置づけの方なのかが把握でき、ちょっと知識が深まりました。
説明文:「真跡がまったくないにもかかわらず、1600年以上にわたり書の世界に君臨し、「書聖」として崇められてきた王羲之。その実像とアルカイックな書の魅力を、3部構成でさまざまな角度から解き明かし、王羲之信仰の全貌に迫ります。
書研究の第一人者監修の下、東京国立博物館や書道博物館に在籍する、第一線で活躍中の若手研究者たちが それぞれの専門に応じて分担執筆。複雑多様な羲之書の世界を平易な言葉で道案内してくれます。」
書が上手いの何の……というのはともかく、王羲之がすごいのは、書聖とまで呼ばれる有名な書家でありながら、本人が書いた書が一点も残されていないことでしょう。歴代の皇帝が懸命にコレクションしてきましたが、それも戦乱で散逸。今では王羲之の書を臨書(書き写すこと)、または拓本したものが残されているのみです。長い間、何度も書き写されてきたため、もとの字形がかなり崩れたりしているともいいます。
もっとも有名な書は「蘭亭序(らんていじょ)」。353年、蘭亭に名士41人を招いて宴を行った際に、詩を詠みあいました。その時の詩をまとめた詩集の序文が蘭亭序。二十八行・全三百二十四字の書が、後の千年以上も名書として珍重されてきたそうです。私はその名前を知っていた程度でしたが、本書では同じ文字でも登場する場所によって書き方を替えるなど、そのすごさを分かりやすく教えてくれます。
また、日本でも鑑真和上が来日した際に、王羲之の真蹟を持参していたという記録が残っています、また、正倉院宝物の中には、王羲之の書「楽毅論」を光明皇后が臨書したものがありますし、十行・九十九字分の「大小王真蹟帳」が収められていたりします。そんな時代から崇められた書聖なのだという証ですね。
私のような者にはその凄さは分かりませんが、とても分かりやすくて興味深い内容でした。歴史好きな方であれば、きっと楽しく読めると思います!