まち歩きが観光を変える―長崎さるく博プロデューサー・ノート
大成功を収めた日本初のまち歩き博覧会の裏側。市民参加の永続的なイベントの作り方
2006年に行われた、長崎を歩くイベント「長崎さるく」のプロデューサーさんが、その裏側を綴ったもの。少し前に、後にこの方が著した『「まち歩き」をしかける: コミュニティ・ツーリズムの手ほどき』(書評はこちら)という著作を読んで興味を持ったので、こちらも手にとってみました。
説明文:「10年間で1割以上落ち込んだ観光客数を底上げするために企画された市民主体の地域活性化イベント「長崎さるく博」。この日本初のまち歩き博覧会は、1000万人以上の参加者を集め、3万人近い市民が関わった。その構想から実施までを、イベントプロデューサーという役割でいかに実現し、市民力を高めるに至ったのかを克明に語る。」
私はこの当時のこのイベントのことは全く知りませんでしたが、地方自治体が仕掛けるイベントのメイン企画が「歩くこと」というのは、本当に斬新ですね。長崎という歴史ある街で、比較的狭い範囲に見どころが集中しているからこそ成り立つ企画なのかもしれませんが、この内容でゴーサインを出した関係者の皆さんに敬意を評したくなるほどの英断だと思います。
筆者は、これまでに全国各地のイベントへプロデューサーとして関わり、大きな成功を収めてきた方です。その方のもとへ、長崎の市役所職員の方から、市民参加型イベント「長崎さるく博」へのプロデューサー就任の依頼が届きます。第一章では、両者のメールのやり取りが丁寧に説明されていますが、克明で興味深いですね。行政側とプロデューサーでは立場も違いますし、それぞれの意図をすり合わせることが重要なのでしょう。
長崎さるくというイベントは、地元在住のガイドが決められたコースを説明しながら歩くというシンプルなものです。本番の年には、42のコースが設定され、ガイドは400名にも達したとか。まさに市民すべてを巻き込んでの一大イベントだったのです。その経験と組織は今でも活かされており、一過性ではない永続的なイベントとして長崎観光に貢献しているそうです。
詳しくは本書をお読みいただくとして、やはりこの手法が奈良でも(または他の地域でも)可能なのかどうかを考えますが、十分に可能でしょう。その当たりのヒントは、後に書かれた『「まち歩き」をしかける: コミュニティ・ツーリズムの手ほどき』でより具体化していますので、興味のある方はぜひ手にとってみてください。