「まち歩き」をしかける: コミュニティ・ツーリズムの手ほどき
有料まち歩きで参加料はガイドさんの収入に。「大阪あそ歩」の成功事例が学べる一冊
低コストの観光振興策として、全国各地に広がりをみせる「まち歩き」。その仕掛け人の方がノウハウを語った一冊です。その成功例として名前が挙げられる「大阪あそ歩」(@osaka_asobo)さんは、2012年10月に「観光庁長官表彰」を受賞するなど、特に注目を集めています。
説明文:「コミュニティ・ツーリズムの決定版として取り組まれている「まち歩き」の入門書。基本的な考え方から、実際に「まち歩き」をしかけて実施する場合の手順、まちの見方、作法、工夫を実例に沿って説く。「長崎さるく博」「大阪あそぼ歩」のプロデューサー、まち歩きをこよなく愛する達人による観光関係者、ガイドさん必携の書。」
私は町おこしのような事業は素人ですので、この方が目指す「まち歩き」とはどのようなものなのか、完全に誤解していました。私のイメージでは、例えば奈良市内であれば、有名な神社仏閣や旧跡などを、ボランティアさんの後をついて巡り歩く、無料の健康ウォーキングの延長のようなものだと思っていたのですが、この方が目指しているものは全く違います。
最も驚いたのが「収入」に関して。大阪あそ歩では、ガイドさん・サポーターさんの2名で、定員15名までのコースをガイドします。参加料は一人1,000円の有料で、一回のまち歩きで最大15,000円の収入が発生しますが、これは事務局では一銭も受け取らず、ガイドさんたち2名の報酬となるのだとか。
こういった企画はボランティアベースになりがちですが、そうなると継続的な運営は難しくなりますし、ガイド側も「私はボランティアだから…」という甘えが出てしまうのだとか。このガイドで生活できるまでの収入までは難しいでしょうが、こうした考え方も必要なんでしょうね。
●名所旧跡や行政区分にとらわれず、歴史や文化が共通した方が住んでいるエリアを「まち」とする
●全距離2~3kmを標準とする(これでも2~3時間になるとか)
など、本書は具体的な示唆に富んでいます。ちなみに大阪あそ歩で実施されているまち歩きのタイトルの例も載っています。
・梅田『「梅田すてんしょ」に陸蒸気がやってきた ~明治7年(1874)5月11日から始まった~』
・新町『天下一の花街・大阪新町を歩く ~夕霧太夫の面影をもとめて~』
・舞洲『幻のオリンピック候補地・舞洲 ~新夕陽ケ丘から「おしてるや」の夕陽を眺めながら~』など
全部で150ものコースが用意されているそうです(※今ホームページを拝見したら「300コース以上」になっていました!)。
観光にも色んな形があると思いますが、こんな形態も成り立つのかと、とても興味深く読めました。観光振興に取り組んでいる方はぜひご一読ください。