2012-11-05
宮大工 千年の知恵―語りつぎたい、日本の心と技と美しさ (祥伝社黄金文庫)
人間国宝の宮大工さんによる分かりやすい寺社建築の解説。読みやすくてためになります
半世紀以上にわたって社寺の保存修理に携わってきた宮大工・松浦昭次さんのご著書です。私は3部作の3番目『宮大工と歩く千年の古寺―ここだけは見ておきたい古建築の美と技』から先に読み始めてしまったため、第一作目の本書『宮大工 千年の知恵―語りつぎたい、日本の心と技と美しさ』と、二作目の『宮大工千年の「手と技」―語りつぎたい、木を生かす日本人の知恵』をまとめて読みました。
紹介文:「人間国宝の宮大工が語る、昔の大工の智恵と技術。古い建物に込められている職人の技術と心意気を伝え、伝統的な日本の社寺建築の美しさの根源である「軒反り」に、日本ならではの「木の文化」の素晴らしさを見る。」
本書では、日本の社寺建築の美しさの基本は「軒反り」の美しさだと説いています。古くから宮大工たちが最も腐心してきたのが、真っ直ぐな木を使って、天に向かってピンと跳ねるように軒を反らすこと。この反りを出したいがために、あらゆる工夫をしてきたのだそうです。垂木や蟇股の美しさ、組物の合理性など、素人目には分からない和建築の造形の美しさが解説されます。
また、木造建築に釘を使わない理由や、変わりゆく大工道具、旅から旅へと全国を飛び回る宮大工の「渡り棟梁」の生活ぶりなど、どれも興味深いですね。難解な専門用語も少なくて読みやすいですし、文庫本化されているのでお手頃で入手できるのも嬉しいところですね。寺社建築に興味のある方はぜひご一読ください!