2012-04-04
宮大工と歩く千年の古寺―ここだけは見ておきたい古建築の美と技 (祥伝社黄金文庫)
古寺を例に、宮大工ならではの視点で寺社建築の見所を解説
半世紀以上にわたり、全国の三十件以上の社寺の保存修理に携わってきた宮大工・松浦昭次さんの著作です。実際の古寺を例にあげて、宮大工ならではの視点で寺社建築の見所を解説しています。私はもともと寺社建築が大好きですからとても楽しく読めましたし、とても分かりやすい内容だけに、これまであまり興味の無かった方にもぜひ手にとって欲しい一冊です。
登場するお寺は、奈良の法隆寺・元興寺、京都の平等院・萬福寺、さらに湖東や尾道の建築物にも触れています。また、第3章の「技術の粋、多宝塔を歩く」の項目が特に興味深かったです。多宝塔とは、四角い建物の上層部分が丸い胴を持つものです。この四角から丸への切り替わる構造が独特ですが、説明図なども掲載されていて、改めてそのすごさが分かります。
著者によると、お寺に行ったらまず「軒反り(屋根の反り)」を見て欲しいとのこと。奈良の古建築ではあまり目立ちませんが、平安時代以降のものでは本当に美しい反りが見られます。個人的には、滋賀・三井寺の本堂などが思い出されますね。また、軒を支える「斗拱(ときょう)」というパズルのような木の組物も要チェックですし、地垂木・飛檐垂木などの意匠も、注目してみると違いが分かって楽しいものです。
お寺のディープな楽しみ方が、宮大工の方ならではの目線から分かりやすく語られていくのがいいですね。同じ松浦さんの作品に、●宮大工千年の知恵 ●宮大工千年の「手と技」などが発売されているようですので、こちらも読んでみたいと思います。