2017-05-01

土偶のリアル――発見・発掘から蒐集・国宝誕生まで

土偶を発見した人々などを描いた17の文章。愛情が伝わってきます!

縄文時代に全国各地で作られた「土偶」について、考古学的な視点だけではなく、発見した人々や文化財登録に関わった人たちのドラマなども交えて描いた、17の文章。決して大げさではない抑えた筆致で描いていますが、著者さんの土偶への愛情があふれるかのようです。

土偶をお固く学術的にとらえるのでもなく、単に可愛い存在としてとらえるのでもなく、その中間あたりを埋めてくれる良書でした!



縄文土器や土偶が国宝に認定されたのはそう昔のことではない。たしかに、岡本太郎は縄文中期の土器を絶讃した。しかし一般的には、縄文の考古資料は美的に眺める対象ではなかった。そのなかで、一人の文化庁調査官が縄文を国宝にしたいと動き始める。日本で評価を得られなければ海外に持っていけばいい、その名声を持ち帰ろう、彼はそう考えた。事実、ベルギーでの展覧会では、外国人から「日本にはピカソが何人いるのか」という声が聞かれたほど、大評判だった。日本に帰ってきてから、調査官は一体の土偶の前で「かわいいね」と笑い合う姉妹を目撃する。この土偶しかない。それは長野県棚畑遺跡から出土している土偶、縄文のビーナスだった。1995年、縄文の国宝第一号となった。
なぜか、土偶の周辺には隠れて見えなくなってしまったドキュメントが多い。縄文の人々と土偶との関係も、現代において発見・発掘した人々と土偶の関係もそうである。この本では、発見、発掘、修復、復元、蒐集、文化財指定など、18の物語で土偶の魅力と謎に迫る。さらに、多数のカラー図版とイラストで国宝5体とこれだけは見ておきたい土偶および土製品を紹介。どう作られ、一体何に使われていたのか、そして現代にどうよみがえったのか。おもわず唸る17の物語。あっぱれ、日本の土偶!

「内容紹介」より


本書では、土偶についてその特徴などをわかりやすい文章で解説していくのと同時に、その周辺の人々も描きだしていきます。歴史的な順番に従って、縄文のビーナスや縄文の女神、仮面の女神、合掌土偶など、国宝に指定されている土偶たちも登場し、その特徴や発掘当時の様子などを紹介しています。

現代人が考えつかないようなユニークなデザインのものも多いのですが、出土する土偶の作風の時代ごとの変遷などの解説もあって、初心者にもわかりやすいですね。

また、後半の近代の人々を紹介する章も読み応えがありました。

15章「天と地を繋げた絵師」では、土器や埴輪を蒐集して絵も遺した蓑虫山人を。
16章「お預かりするという思想」では、出土した資料が散逸しないよう私財を投げ打って手元にとどめた明治の蒐集家たちのお話。
17章「日本にはピカソが何人いるのか」では、縄文の国宝が誕生するまでの経緯などをキーマンに取材した記事。

土偶というものをわかりやすく、多角的に紹介していて、最後まで飽きずに読めます。写真も多めに掲載されているので、見ていて楽しいですね。

同じ譽田亜紀子さんのご著書では、初心者向きのビジュアルブック『はじめての土偶』(紹介記事)がとてもわかりやすいのですが、その次くらいに手に取るといいかもしれません。



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