瓦と古代寺院 (臨川選書)
古代寺院の姿を、発掘調査の結果と出土した瓦から読み解いた一冊。やや難解です
仏教伝来から寺の造営が始まって間もない時代まで、古代寺院の姿を、発掘調査の結果から、そして出土した「瓦」を使って読み解いた一冊。古い瓦の分類について調べたかったので読んでみましたが、伽藍配置や歴史書の内容からの考察の部分も多く、想像以上に全般的な内容でした(続編の『続・瓦と古代寺院』も出版されています)。
1983年に刊行された内容を、出版社を変えて1993年に復刊されたものだということですので、調査結果などはかなり古めなので注意が必要かもしれません。
説明文:「出土遺物の大部分である瓦を資料に古代史復元を試みる画期的な書。文様や製作技術から寺院の相互関係を探り、成立の背景や文献との接点を考察。 」
第一章 仏教の伝来
第二章 はじめての寺作り(法隆寺・斑鳩の寺々・四天王寺)
第三章 天皇の寺々(川原寺・大官大寺・薬師寺)
第四章 遠の朝廷の官寺と東の官寺(太宰府・観世音寺・下野薬師寺・多賀城廃寺)
第五章 造瓦工房の誕生(瓦作りの系譜や進化など)
奈良時代には、先端技術を持った渡来人の職人たちを建設のために豊富に動員できた「官寺」(飛鳥寺・川原寺・法隆寺・大官大寺・薬師寺など)と、まだそこまで至らない「氏族の氏寺」(紀寺・穂積寺・佐伯院・下野薬師寺など)が共存していました。規模の大小だけではなく、使用した瓦の質にも大きな差があるのだとか。
どうしても「時代が下るほど品質が良くなる」という事実ばかりに目が行きますが、当然のことながら、その同時代であっても、官と民、中央と地方では大きな差があったのです。縄文時代や弥生時代のこうした差はなんとなくイメージできますが、同じ奈良時代の寺であっても、いたるところに格差があったんでしょうね。
本書には私には消化しきれない部分もたくさんありましたので、もうちょっと基本的なものを読んで、またいつか読みなおしてみたいと思います。