2015-10-10

瓦と古代寺院 (臨川選書)

古代寺院の姿を、発掘調査の結果と出土した瓦から読み解いた一冊。やや難解です

仏教伝来から寺の造営が始まって間もない時代まで、古代寺院の姿を、発掘調査の結果から、そして出土した「瓦」を使って読み解いた一冊。古い瓦の分類について調べたかったので読んでみましたが、伽藍配置や歴史書の内容からの考察の部分も多く、想像以上に全般的な内容でした(続編の『続・瓦と古代寺院』も出版されています)。

1983年に刊行された内容を、出版社を変えて1993年に復刊されたものだということですので、調査結果などはかなり古めなので注意が必要かもしれません。

説明文:「出土遺物の大部分である瓦を資料に古代史復元を試みる画期的な書。文様や製作技術から寺院の相互関係を探り、成立の背景や文献との接点を考察。 」


第一章 仏教の伝来
第二章 はじめての寺作り(法隆寺・斑鳩の寺々・四天王寺)
第三章 天皇の寺々(川原寺・大官大寺・薬師寺)
第四章 遠の朝廷の官寺と東の官寺(太宰府・観世音寺・下野薬師寺・多賀城廃寺)
第五章 造瓦工房の誕生(瓦作りの系譜や進化など)

奈良時代には、先端技術を持った渡来人の職人たちを建設のために豊富に動員できた「官寺」(飛鳥寺・川原寺・法隆寺・大官大寺・薬師寺など)と、まだそこまで至らない「氏族の氏寺」(紀寺・穂積寺・佐伯院・下野薬師寺など)が共存していました。規模の大小だけではなく、使用した瓦の質にも大きな差があるのだとか。

どうしても「時代が下るほど品質が良くなる」という事実ばかりに目が行きますが、当然のことながら、その同時代であっても、官と民、中央と地方では大きな差があったのです。縄文時代や弥生時代のこうした差はなんとなくイメージできますが、同じ奈良時代の寺であっても、いたるところに格差があったんでしょうね。

本書には私には消化しきれない部分もたくさんありましたので、もうちょっと基本的なものを読んで、またいつか読みなおしてみたいと思います。



【瓦と古代寺院 (臨川選書)】の関連記事

  • 『ヤマト王権誕生の礎となったムラ 唐古・鍵遺跡 (シリーズ「遺跡を学ぶ」135)』~唐古・鍵遺跡の発掘の歴史や特徴が解説されたドキュメンタリー的な一冊~
  • 『倭の五王 - 王位継承と五世紀の東アジア (中公新書) 』~倭の五王(讃・珍・済・興・武)が使者を派遣した意図は?当時の国際情勢から読み解いた一冊~
  • 『悲劇の皇子(みこ)たち (日本書紀を歩く1)』~有間皇子・大友皇子など、非業の死を遂げた22人の皇子たちを淡々と紹介~
  • 『平城京のごみ図鑑 最新研究でみえてくる奈良時代の暮らし』~平城京の“ごみ”から見えるリアルな奈良時代。分かりやすくて面白い良書です!~
  • 『ときめく縄文図鑑 (ときめく図鑑+)』~土偶や土器、装飾品など、可愛くわかりやすく紹介。初心者さんにもお勧め!~
  • 『土偶のリアル――発見・発掘から蒐集・国宝誕生まで』~土偶を発見した人々などを描いた17の文章。愛情が伝わってきます!~
  • 『古墳時代 美術図鑑 (別冊太陽 日本のこころ)』~古墳時代の物たちを美術的に見つめ直した一冊。美しくて読み応えあり!~
  • 『日本人はどこから来たのか?』~日本人の祖先はどのルートで渡ってきたのか?興奮できる一冊です!~
  • 『古代天皇誌』~神武~桓武天皇まで、古代の天皇を解説。やや駆け足で消化不良感も~
  • 『「古代史」ミステリーツアー (だいわ文庫)』~古事記・邪馬台国・蘇我氏など、古代史を17のテーマで解説。分かりやすい内容です~
  • 『瓦と古代寺院 (臨川選書)』~古代寺院の姿を、発掘調査の結果と出土した瓦から読み解いた一冊。やや難解です~
  • 『古代天皇陵の謎を追う』~関東の大塚初重先生が、関西の古代の天皇陵について語った一冊。興味深い内容です~


  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ