古代天皇陵の謎を追う
関東の大塚初重先生が、関西の古代の天皇陵について語った一冊。興味深い内容です
東京生まれ・千葉県在住の考古学者・大塚初重先生が、関西に存在する古代の天皇陵について語った一冊。
東京新聞の連載記事「陵墓の謎を追う」がベースとなっていて、書下ろしを加えたものだとか。古代天皇の治定(誰が埋葬されているのか)の問題を中心に、単なる謎解きではなく、古墳発掘と出土品の研究成果をもとに言及しています。
説明文:「現在天皇陵とされる古墳の中には、その天皇の治世と古墳の築造時期が大幅にずれている例が存在する。なぜそんなことになるのか? そこに葬られているのは本当は誰か? 日本考古学界の第一人者が、今日までの発掘調査と出土品研究をもとに、卑弥呼の墓・邪馬台国論争や考古学の課題も含め、最新の研究成果を語る。」
本書は以下のような章立てとなっています。
●序章 古墳時代と大王陵
●第1章 神武天皇と欠史八代の天皇陵
●第2章 応神・仁徳天皇陵再考
●第3章 継体天皇の謎に迫る
●第4章 継体天皇皇后陵─衾田陵の謎
●第5章 五条野丸山古墳は欽明陵か
●第6章 崇峻天皇陵の謎
●第7章 斉明天皇陵と牽牛子塚古墳
●第8章 天武・持統天皇合葬陵を探る
●終章 陵墓の疑惑は晴らすべき
古代史ファンの端くれである私にとって、どれも魅力的な内容です。内容はさすがに専門的なものもふくまれますが、最後まで興味深く読み進められました。
古代の天皇の陵墓というのは、よく言われているように、「○○天皇陵」に本当に○○天皇が埋葬されている確率は低いとされています。実際には誰かが埋葬された古墳ですらなく、自然の丘であると考えられるものもあるとか。
本書にはその信頼度の一覧表が掲載されていますが、初代・神武天皇陵から第42代・文武天皇陵まで、確実に合っていると断言できるのは十箇所しかないのだとか。それらについて、すべて考古学的な検知から検討されています。また、治定の歴史や盗掘の記録などにも触れられていますので、とても読み応えがあります。
メモ代わりに記しておきますが、牽牛子塚古墳=斉明天皇陵という、ここ最近の定説になりつつある説について。斉明天皇が崩御して、まずは明日香村・岩屋山古墳に葬られ、それから牽牛子塚古墳へと移されたという説があるとか。あとで詳しく調べてみます。