
マンホール:意匠があらわす日本の文化と歴史 (シリーズ・ニッポン再発見)
マニアさんが画像コレ約400点を紹介。画像は白黒。地域紹介の読み物的に充実してます
最近ちょっとしたブームが到来している「マンホール(の蓋)」。美しいデザインマンホールを探し歩いて楽しむ方が増えています。
本書は、20年弱の間に1600枚以上の市町村のマンホール写真を撮り続けてきたマニアの方が、デザインの解説をまじえながらコレクション約400点を紹介しています。ほぼ全国のマンホールを網羅していて、その熱意に圧倒されますね。
きっかけは、伊勢市で伊勢神宮への「おかげまいり」を描いたマンホールを見たこと。定年退職前は東京都の下水道局に勤務なさっていた(水質検査の業務でマンホールとは関係なかったとか)こともあり、すっかりその世界へのめり込んでいったのだそうです。好きが高じて『日本のマンホール』という本を自費出版し、2年後に本書を上梓した……と、まさにマニア道のど真ん中を歩んでいらっしゃいます(笑)
説明文:「日本全国を折りたたみ自転車でまわりながら、各市町村のマンホールのふたを撮り続けている著者によると、諸外国のマンホールはごく一部をのぞいては滑り止めのための模様があるだけ。一方、日本では、市町村の「花・木・鳥」のほか、祭りや風景、その土地にちなんだ建物や名産品などいろいろなものが取り上げられて描かれているという。著者がこれまで撮影した4000枚を超える写真のなかから、テーマ別にマンホールをとりあげ、その土地固有の文化を垣間みる。」
日本各地のマンホールのふたの写真を紹介していますが、「県庁所在地」「富士山と山々」「富岡製糸工場と歴史的建造物」「いつでも見られる日本の祭りや郷土芸能」「各地の伝統工芸・地場産業」「地方ならではの特産品」「地元のスポーツ自慢」という項目ごとに丹念に集めているのがユニークです。
意外な土地の意外なデザインに驚いたり、まるで旅行ガイド本を読んでいるような新鮮な発見があります。マンホールを愛でる趣味というのは、路上観察やちょっとした変わったものが好きな人間のものというイメージですが、この方は民俗学まで入ってきそうな、大人な楽しみ方をなさっていますね。
読み物としては迫力がありますが、先に発売になっている『デザインマンホール100選―阿寒から波照間島へ旅歩き』(紹介記事)、『厳選! デザインマンホール大図鑑』(紹介記事)などと比べると、画像が小さめで白黒のため、やや迫力に欠ける印象です。雑学なども多数掲載されていますし、あくまでも読み物として楽しむべきでしょう。
よりディープにマンホールを愛でたい方はぜひ!