おかしなジパング図版帖 -モンタヌスが描いた驚異の王国-
17世紀のオランダ人が描いた奇書『日本誌』。とんでもない挿絵が興味深く面白い!
エッセイスト・宮田珠己さんが、17世紀に描かれた「オランダ人が見た不思議な日本」を、多くの挿絵を引用して紹介する一冊。鎖国体制の日本に来たオランダ人は、日本で見聞きしたことを文章などで広めていきますが、伝言ゲーム的に情報は誤って伝わり、イラスト入りの本になった時には、すでに原型を留めていないまでに変形しています。
本書で主に紹介するのは、1669年にオランダ人のアルノルドゥス・モンタヌスが著した『日本誌』という書物です。本国で歴史世や教科書の出版を手がけていた彼は、オランダ使節フリシウスの『江戸参府日記』などの情報をもとに、後に奇書と呼ばれる『日本誌』を執筆しました(※彼自身は日本へ来たことはありません)。当時のヨーロッパでは日本に関する情報は少なく、いくつかの本を参考にしたものの、テキストから挿絵を書き起こしているため、トンデモな世界となってしまっているのです!
説明文:「噂と空想が入り乱れる、フシギの国の挿画。「モンタヌスやその時代の人々の日本情報は、そんな意外性と荒唐無稽さが横溢して、実に胸躍る、ありえない世界を現出させていた」。外国人が想像で描いた、でたらめでほほえましい日本の地図や、豊満な胸をした女性のブッダ、だぶだぶソデのサムライ、ラジオ体操おじぎをする日本人たちなど、ユニークすぎる絵図の数々。「そうして私はなぜか気づくと、自分でこんな本を書くことになっていたのである」(宮田珠己)。」
この手の本は、たいていどれを読んでも面白いものですが、本書は図版が大きめなのがいいですね。挿絵として使用された版画が大きめに掲載されていますし、注目の部分はアップの画像も載せてあります。
見たこともない国の風俗を、テキストから連想して絵を書き起こすという作業は大変らしく、例えば着物の着方・お辞儀の仕方など、いちいちメチャメチャです。参考とした本に中国やインドのものも混じっていたのか、不思議な雰囲気なんですよね。当時の安土城などを描いたものも、実物を見ていないのですごいことになっていますw
そんな風俗の描写も面白いのですが、すごかったのが5章「得体の知れない宗教」の項目でした。犬顔の仏さま(阿弥陀仏だとか)が7つの頭がある馬に乗っていたり、三十三間堂を怪しくしたような五百羅漢堂があったり、千手観音の手の付き方がおかしかったり、補陀落渡海らしき絵では海に飛び込んでいたり。伊勢神宮なども登場しますが「粗末」扱いされています!多くのシーンでヒンズーの神々と混同されているのが見えて、なかなか面白いですね。
おかしな図版に目を奪われますが、ちゃんとその当時の情勢や、こんな本が書かれた背景なども解説してありますから、歴史好きな方にもオススメです。私はとても楽しく読み終えましたので、興味のある方はぜひ手にとってみてください!