
JAPAN UNDERGROUND
日本の「地下空間」の写真集。あまりにも退廃的で蠱惑的。身震いするほどの美しさです
日本の足元に広がる「地下空間」ばかりを撮影した写真集。発売は2000年8月で、その後、続編が刊行されています。今からひと回りも前の作品とは思えないほど蠱惑的であり、まったく古びることはありませんね。
説明文:「地下ではSFの世界が現実のものである。20世紀に作られた日本各地の地下のライフラインや大深度の研究施設、地下壕の要塞から天然の洞窟まで61箇所を、7年の歳月をかけて撮影したフォト・ルポルタージュ。」
本書に掲載されているのは、写真家が1994年~2000年の間に撮りためた61箇所の写真です。鉱山跡・地下壕・地下調整池・トンネル・地下変電所・処理場・研究施設・地下鉄・地下水族館・ポンプ所・水源地・車両基地・人工冷凍庫・宗教施設・放水路・地下ドーム・銅山・洞窟・スーパーカミオカンデなど、ありとあらゆる地下施設へと潜り、その姿を収めています。
地下の世界は、自然光が届かないこともあり、同じコンクリート造りであっても地上とはまったく違った表情を見せます。巨大建造物が多いこともあり、どの写真を見ても非現実的な空気感が漂ってきます。少し前に「廃墟」の写真が流行りましたが、それとはまた別のベクトルの、どことなく気狂いすら感じさせる冷たさがあるんですね。
ゲームでいうと「バイオハザード」、映画でいうと「マトリックス」や「ブレード・ランナー」の雰囲気で、こんな施設が足元に広がっていて、地上とはまた違った環境を生み出しているかと考えると、どこかゾワゾワッとしたものまで感じます。
本書は大きな話題となったため、『JAPAN UNDERGROUND〈2〉』『JAPAN UNDERGROUND〈3〉』『JAPAN UNDERGROUND〈4〉』という続編も登場しています。同時に拝見しましたが、どれも素晴らしいですね。大型の写真集ですからお値段も張りますが、手元に置いておきたくなる作品です。