万葉秀歌探訪 (NHKライブラリー)
万葉集の秀歌を、巻ごとに分かりやすく解説。古い本ですが古びていません
万葉集の秀歌を、巻ごとに分かりやすく解説した一冊。NHKの番組テキストだったものを一冊にまとめていて、初出は1993年。これだけ時間が経っていても、内容はまったく古びないのですから、万葉集はすごいですね(笑)
全部で300首近い万葉歌が掲載されています。歌や歌人の情報など、基本的なところも丁寧に解説されていますし、当時の人々の暮らしぶりが伝わってきて、初心者のかたにも理解しやすいでしょう。
説明文:「『万葉集』は、現在にいたるまで日本の詩歌の源流に位置しつづける、わが国最古の歌集である。全二十巻・四千五百余首の中から、歌人の目で、各巻ごとに必読秀歌を厳選し、この歌集の魅力を立体的に探る。『万葉集』を読み解くこと―それは、現代日本人が失いつつある、日本の、日本人の“アイデンティティー追求の旅”でもある。」
万葉集の関連書はいくつも出版されていますが、本書は巻ごとに、筆者が選んだ名歌を紹介していく形式です。歌の背景もしっかり解説されていますし、関連する歌も合わせて紹介されていて便利。ただ、意味の取りやすいとされた歌については現代語訳が省略されたりしていて、一部意味が取りづらい歌があるのが残念でした。
しかし、その歌が詠まれた時代背景を、民俗学的・精神的な観点からも丁寧に解説されているのがいいですね。この時代の人々が歌を詠むという行為は、現代人のそれとはまったく意味合いが違います。恋の表現も性への意識も、結婚の形態も違いますし、そうした違いにあらためて気づかせてくれます。
最初のページから丁寧に読んでいくというよりは、適当にページを開いて目についた歌を詠むという形がとれるのがいいですね。小さな声で口ずさんでみると、より万葉人が親しく感じられるでしょう。
古い本なので、中古本くらいしか手に入らないと思いますが、気になる方は探してみてください。