小さな恋の万葉集
万葉学者・上野誠さんが万葉歌を「おしゃべり語」に超訳した意欲作!親しみやすさは○
多方面でご活躍中の万葉学者・上野誠さんによる、「おしゃべり語」に超訳された万葉集本。写真家・佐藤秀明さんが切り取った奈良の風景と交互に掲載されています。2005年に発売されたものですが、古びるような内容ではありませんので、今でも十分に楽しめますね。
説明文:「万葉恋歌の超訳と写真で綴るアンソロジー。「これが万葉集?!」と驚きの声があがる、斬新な超訳で綴る万葉恋歌のアンソロジー。万葉集の恋歌は、日本語で恋を歌ったもっとも古い記録でありながら、1300年前の歌とは思えないほど新鮮みに溢れています。これを、現代の万葉の語り部として活躍中の万葉学者、上野誠が、いにしえの恋人たちのため息やおしゃべりが聞こえてくるような話ことば訳にしました。たとえば「あまた悔しも」は「めちゃ、悔しいよぉ」といった感じ。また原文は、そのまま声に出して読める現代仮名遣いによる平仮名表記。おまけに、せつない恋の情景がよみがえる、なつかしさ満点の奈良の撮り下ろし写真付き。あなたも昔の恋を探しに行きませんか。」
たとえば、万葉歌がこんな風に訳されていきます。
「あなたとわたしを
引き裂こうとしている人がいるのよ……
だから、だから──お願い、あなた
噂話なんて聞いちゃダメ──
絶対に!
決して!」
「なをとあを
ひとぞさくなる
いであがきみ
ひとのなかごと
ききこすなゆめ」
元の歌は、「汝をと我を 人ぞ放くなる いで我が君 人の中言 聞きこすなゆめ」(大伴坂上郎女 巻4-660)。巻末にまとめて分かりやすい解説がついていますが、本文のところでは詩集を読むように、現代の言葉へ超訳された歌が掲載されています。
こうした「現代語で親しみやすく」という試みはずっと続けられていて、特に目新しいものではありませんが、敷居が低くなることは間違いないでしょう。
ただ、いい年のおっさんが読むと、万葉集の恋唄自体がかなりべっとりと甘めのものが多いのに加えて、さらに現代語まで甘さが増しているので、やや胸焼け気味で……。そういった方面がお好きな方はぜひ手にとってみてください。