散歩のとき何か食べたくなって (新潮文庫)
池波正太郎さんの食エッセイ。ふらっと蕎麦屋へ入ってお蕎麦で一杯。憧れます!
優れた時代小説などを残した作家・池波正太郎さんの食エッセイ。東京の下町を中心に、寿司・そば・天ぷら・うなぎ・洋食・中華・甘味など、行きつけのお店と料理を淡々と紹介していきます。
私は池波さんの作品はこれまで読んだことがありませんでしたし、テレビで「鬼平犯科帳」なども観たことがありません。しかし、食にこだわっていらっしゃるという評判は耳にしていて、某古本屋さんで文庫本を見つけて購入してみました。重厚でありながら軽やか。さすがですね。
説明文:「映画の試写を観終えて、銀座の〔資生堂パーラー〕に立ち寄り、はじめて洋食を口にした40年前を憶い出す。外神田界隈を歩いていて、ふと入った〔花ぶさ〕では、店の人の、長年変らぬ人情に感じ入る。時代小説の取材で三条木屋町を散策中、かねてきいていた〔松鮨〕に出くわす。洋食、鮨、蕎麦、どぜう鍋、馬刺から菓子にいたるまで、折々に見つけた店の味を書き留めた食味エッセイ。」
この本は、食べ歩きがテーマになっていますが、決して最近のグルメ本のように、懇切丁寧に場所やおすすめのメニューなどを紹介していくものではありません。グルメな文豪が、どんな店を愛し、どんな料理を楽しむのか、それを憧れをもって眺めるための文章です。
お腹をぐーっと鳴らすのではなく、そのスタイルに憧れを抱きながら読むべき内容ですね。
夕方になると馴染みの店でいっぱい引っ掛けながら美味い料理を食べる。そんな古き良き江戸っ子のライフスタイルを守っているような方ですから、昭和を懐かしむ男であれば、誰もが羨むでしょう。今なお多くのファンの方たちが存在するのが十分に理解できました。
1977年に出版されたものの文庫化ということですから、それから30年近くがたった今、多くの店が店を閉めていても不思議はないようにも思えますが、池波さんに気に入られるようなお店であれば、ますます繁盛している可能性もあるでしょう。
京都や名古屋など、地方都市のお店も紹介されていますが、やはり東京がメインです。関東にお住まいの方であれば、池波さんの著書を頼りに色んな場所を歩いてみたら、きっと大都会もまた違った表情が観られるでしょうね。ちょっとだけ羨ましくなります(笑)