
妹背山婦女庭訓 (橋本治・岡田嘉夫の歌舞伎絵巻 5)
天智天皇の御代を描いたファンタジックな歌舞伎作品。艶やかな絵入りで楽しく読みやすい!
歌舞伎通の作家・橋本治さん、画家・岡田嘉夫さんによる「歌舞伎絵巻」シリーズ第5巻にして完結巻。歌舞伎の世界にはあまり詳しくありませんが、天智天皇の御代を描いた作品だということは知っていたため、何気なく手にとってみたところ、これがめっぽう面白い!ストーリーもファンタジーですし、艶やかな絵も素晴らしいですね。
説明文:「大化の改新をヒントにして作られたファンタジー物語。魔王のようになった蘇我入鹿を、みんなが力をあわせて倒します。悲しい恋物語もあります。絵本で読む古代の歴史ファンタジー歌舞伎シリーズ第5弾。」
「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」(Wikipedia)は、1771年が初演の、人形浄瑠璃や歌舞伎の演目のひとつ。
645年の「大化の改新」前後を舞台としていますが、風俗は江戸時代のもの、史実に大きく脚色を加え、色恋沙汰から人情話まで何でもあり。蘇我入鹿が悪の親玉の怪物として描かれ、それを倒すために善玉が策を弄するあたり、ヒロイックファンタジーのような展開ですね。
天智天皇、蘇我蝦夷、中臣鎌足、藤原不比等ら、歴史上の人物が登場し、猿沢池に身を投げた采女、神鹿を射殺して石子詰の刑を受けそうになる話、三輪山で恋人に赤い糸・白い糸を結んで跡を追う話など、奈良っぽさにあふれています。
なお、タイトルにもなっている妹山・背山は、吉野川を挟んだ山の名前。本作では、実らぬ恋をした男女が、それぞれの山にある別荘からお互いを見つけながら、ちょっとした誤解も自害して果てるエピソードなどもあります。
絵本というにはテキスト量も多めで、読み応えもありますし、お話としても十分面白いですね。美しい絵と合わせて、夢中になって読み進められました。奈良好きな方はぜひ!
なお、ストーリーについては、文化デジタルライブラリー「妹背山婦女庭訓」のページがわかりやすいです。あらすじを知りたい方はこちらをどうぞ!