
2012-03-02
日本ノ霊異ナ話
「日本霊異記」のエピソードを小説に。不思議テイストです
平安時代初期に、薬師寺の僧・景戒が著した最古の仏教説話集「日本霊異記」に収められたエピソードをもとにした小説です。2004年に発表された作品で、作者の伊藤比呂美さんは『良いおっぱい悪いおっぱい』などのエッセイを書いている方。この一冊だけ異彩を放っているような印象ですが、後書きによると昔から日本霊異記が大好きだったのだそうです。
もともと日本霊異記には計116話が収録されていますが、いずれも平安時代の風俗を色濃く表していて、生々しい性愛描写が含まれるものも多数あります。あらすじを読むだけでも奇妙でグロテスクなものが多いのですが、その話をベースとして筆者さんの言葉で再構築されているため、より生々しくなっています。
奈良の元興寺を舞台とした、智光と頼光という二人の僧の話(智光曼荼羅)や、行基が母親に向かって子供を捨ててこいと命じる話など、奈良を舞台にした話も収められています。さらに、男との性愛に溺れ赤子に乳をやるのを怠ったため乳房から膿が出る母親の話、肉団子のような子供を産む話、死者をまつらない文化の国から来た人の話、艶かしい天女の仏像と交わる僧の話など、どきつい印象すら受けるエピソードなども。さらに、女性器の中に蛇が入り込むというモチーフの作品が数パターンあります。
作者のイメージによって他所からのエピソードが付け加えられたりしているため、日本霊異記そのままではないことには注意が必要ですが、読み物としてはとても面白いです。古い日本の泥臭くて残酷な世界観は他ではなかなか見られないですし、これを楽しめる方も少なくないのではないかと思います。日本土着のエログロの世界を垣間見てください!