
今昔物語(上)―マンガ日本の古典 (8) 中公文庫
「今ハ昔」から始まるエログロ説話集を、水木しげる先生が漫画化。大人の読み物です!
「今ハ昔」という書き出しから始まることで有名な、平安末期に設立した説話集「今昔物語集」(Wikipedia)を、あの水木しげる先生が作品化したもの。豪華執筆陣が日本の古典を漫画化した「マンガ日本の古典」シリーズの一作で、上下巻あります。
もとの今昔物語集は、インド・中国・日本の三部で構成されていて、どのエピソードも仏教的な、そして民話的な不思議さがあふれています。エログロの描写も多く、今ストーリーを追ってもとても面白いですね。水木しげる先生の絵や語り口も原作にマッチしていて、最後まで楽しく読めました。
説明文:「「今ハ昔…」で語り出される一千余話を収めた日本最大の説話集。今も昔も変わらない人間の欲望を活写し、芥川龍之介の小説『薮の中』『鼻』をはじめ、映画、劇画にも多く取り上げられた、面白うて、やがて恐しき物語の数数。平成九年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞。」
上巻には、「入れ代わった魂」「産女」「妻の恨み」「色事師平中」「霊鬼」「大江山の悪夢」「老医師の恋」「かぶら男」「赤鼻の僧」「酒泉郷」「堂の主」。下巻には、「ねずみ大夫」「安倍晴明」「稲荷詣で」「幻術」「妻への土産物」「水の精」「墓穴」「引出物」「外術使い」「寸白男」「生霊」「蛇淫」が収録されています。
お子さんには読ませられないような、下衆な(でも興味深い)お話も多いのですが、そこが面白いところです。生霊の存在が普通に信じられていたり、旅の途中で山賊に襲われたり、平安時代の庶民の生活も分かりますし、「人間の根っこの部分はずっと変わらないんだ」というペーソスを感じますね。
もっとも好み(?)だった話は「かぶら男」。旅の途中で欲情を催した男が、道端の畑に植わっていた二股のかぶらに穴を開け、そこに精を放ちます。男がそのまま立ち去ると、畑仕事にやってきた娘がそれを見つけ、その液体の淫らさにやられてしまい、かぶらを美味しく平らげてしまうのです!すると、生娘のまま妊娠し…というお話です。18禁のエロ同人誌くらいのグロさですね(笑)
他のお話はここまで強烈ではありませんが、不思議風味の短篇集になっていますので、大人でも十分に楽しめるでしょう。
なお、この「マンガ日本の古典」シリーズは、単行本が図書館に所蔵されていることが多いです。この今昔物語はもちろん、石ノ森章太郎先生の「古事記」、さいとう・たかを先生の「太平記」なども図書館で見つかると思いますので、ぜひ探してみてください。とっつきづらい古典も、漫画から入ると気楽に楽しめますよ!
下巻も合わせてどうぞ!