
會津八一のいしぶみ
会津八一さんの歌碑50基を紹介。学術目的ではなく、偉大な先生のファンブックのよう!
東洋美術・仏教美術の研究家であり、歌人・書家としても知られる会津八一さん。新潟生まれで、奈良の土地をこよなく愛し、奈良の仏さまや古寺を歌った美しい短歌を多数遺しています。本書では、会津八一さんの自筆の歌碑・揮毫碑、計50基を、写真入りで紹介しています。
会津八一さんを敬愛する人たちが組織する「秋艸会」によって出版されたため、文章の書き手も会員の方たちが多数参加。歌碑の解説というよりも、思い出話しやエピソードなどを交えて紹介しています。このため、各ページによって内容の差が大きく、決して学術的なものではありません。偉大な先生を偲んだファンブックみたいな印象ですね(笑)
説明文:「碑は後世に残るものと、自筆の碑を多く残した会津八一。歌碑、揮毫碑の計50基を、ゆかりの人々、研究者による寄稿と写真で紹介。巻末には、四国八栗寺の鐘銘を、会津自身の解説とともに特別掲載する。」
私自身、会津八一さんの歌は大好きで、奈良に関する歌はよく拝見していますし、東大寺・唐招提寺・春日大社などにある歌碑は、何度も写真に収めたりしています。書のことはよく分かりませんが、先生の文字はとても美しく、歌と同様にとてもやわらかな印象があります。
本書では、全国の50の歌碑が紹介されていて、順番に眺めていくだけでも楽しいですね。いろんな素材があったり、意外な場所に建立されていたり。つい先日、2014年11月にも、法隆寺で新たな歌碑の除幕式があったばかりですから、こうした活動はまだまだ広がっていくんでしょう。
また、私は奈良の歌は繰り返し繰り返し目にしてきましたが、新潟の地で詠んだ歌については、これまでほとんど知りませんでした(※私も新潟出身です)。この本で初めて触れましたが、ありありと新潟の冬や海の情景が浮かんでくる歌が多くて、感動しました!これからその時代のものにも触れていきたいですね。
そんな発見はあったものの、いろんな方が原稿を手がけているだけに、会津八一さんの歌と書を知る一冊としては、やや中途半端な印象もありました。内容が分かりづらい歌は少ないにしても、歌の意味も解説されていないことが多く、疑問に思ったページもあります。入門書や専門書としては、もっとよくまとまったものがありますので、そちらから入った方がベターかもしれませんね。