
西行を歩く―さすらいの歌僧を追う旅
吉野山の桜を愛した平安時代の歌僧・西行。その足跡を丹念にたどった読み応えのあるルポ
元新聞社カメラマンだった筆者が、俳聖・芭蕉についで、生涯を通じて旅を続けた「西行法師」の足跡をたどったルポ。終焉の地である大阪府河南町・弘川寺、庵を結んで何度も訪れた吉野山、修行を行った大峰山、さらには陸奥・四国・高野山・熊野・伊勢・京都と、全国を巡り、美しい写真とテキストで紹介しています。
研究を目的としているのではなく、どちらかというと、自家用車を使って現地へ行き、地元の方へ簡単に聴きこみをしながら目的地を探すスタイルです。「結局分かりませんでした」という場所も多くありますから、紀行エッセイとして読むべきかもしれません。
説明文:「どこまでが歴史の事実でどこまでが後年の物語なのか。各時代の私たちの祖先が、畏敬し憧れて語り伝えてきた西行像を、朝日新聞の元カメラ記者が追う。」
『新古今和歌集』に、もっとも多い94首が収められた西行。武家の息子として生まれ、出家した後に山へ籠もったり、老齢に差し掛かってから重源上人の要請を受け、陸奥へ大仏再建の勧請へと赴いたりと、ずっと移動を続けてきました。
しかし、平安末期に生きた方ですから手がかりは少なく、ずいぶん研究は進められているものの、まだ細かな足取りまでは完全に判明していないのだとか。高名な僧侶であったとしても、この時代の旅は決して楽なものではなかったはずですから、私が想像するよりもはるかに大変だったんでしょうね。
私はそれほど詳しくはありませんが、終焉の地で墓も遺されている弘川寺や、生誕の地である紀伊国田仲庄(現・紀ノ川市打田町)など、比較的近い位置にいらっしゃったようです。吉野の西行庵などとともに、ぜひ訪ねてみたくなりました。
なお、この本は1997年の発売で、もう書店などでは見つからないと思います。興味のある方は、ネットや図書館で探してみてください!