もっと知りたい狩野永徳と京狩野 (アート・ビギナーズ・コレクション)
狩野永徳で花開いた「京狩野」の系譜を、絵の特徴や人柄などを交えて解説。分かりやすい!
桃山時代から江戸時代まで、宮廷と幕府の御用絵師集団として君臨した「狩野派」。狩野正信・永徳・光信・探幽・山楽・山雪など、名前は幾人も思い浮かびますが、それぞれどのような順番で登場し、どのような作品を描いてきたのか、区別しづらいものです。
本書では、狩野永徳が大成させた「京狩野」の系譜について、それぞれの絵の特徴や伝わっている人柄などを交えて解説しています。この「もっと知りたい」シリーズはとても読みやすくて、普段からお世話になっています。この回も美術史の初心者にも理解しやすい内容で、面白かったです!
説明文:「国宝「洛中洛外図屏風」詳説!安部龍太郎さんの小説「等伯」が直木賞をとってことで、長谷川等伯に注目が集まっています。小説では等伯の敵役として描かれている狩野永徳ですが、遺した作品は数少ないですがどれも素晴らしいものです。画家の生涯を作品の紹介で追った本書は、狩野永徳と狩野派を美術の視点から紹介したものです。」
狩野派の流れを簡単に整理すると、伊豆出身の祖・狩野正信が上洛を果たし、2代目・狩野元信がどんな画風でも対応できるように幅を広げ、宮廷で土佐派を押しのけるまで存在感を示します。そして三代目・狩野松栄直信は、「永徳の父」としての方が有名な人物だとか。
幼い頃から才能を認められ、元信から目をかけられていたのが、4代目の天才・狩野永徳。若いころの大和絵風の小品から、若干20歳そこそこで「洛中洛外図屏風」を描き、権力者のお抱え絵師として、大画面の美しい作品を続々と描きます。代表作とされる「唐獅子図屏風」もこの時期のもの。
その後、あまりにも注文が殺到しすぎたため、樹木をドアップで描いたりする「怪奇様式」へ傾倒し、どんどん生気を失っていきます。永徳の死後、その跡を継いだのが嫡男の狩野光信。父と違った繊細な画風だったため軽んじられることも多いとか。その弟の狩野孝信と長信が江戸幕府の仕事を受けるため江戸進出を果たしました。
京都に残ったのは、永徳の弟子であり、その画風を引き継いだ狩野山楽。その跡を継いだ狩野山雪になると、永徳の怪奇様式をさらに進めたような画風に辿り着き、永納・永納・永敬と続きます(私が好きな曾我蕭白は、永敬の孫弟子にあたります)。
様々な画風を駆使した狩野派絵師たちですし、この本に掲載されている作品を見た程度では、大雑把な把握に過ぎませんが、全体の流れを大づかみにするには最適な一冊でしょう。
ちなみに、この本を読もうと思ったきっかけは、奈良市・正暦寺の福寿院に「狩野永納」の作品が置いてあったためです。聞いたことがあるような無いような方でしたが、ちゃんと京狩野の三代目!山雪の跡を継いだ方ですね。
さらに言うと、天理市・長岳寺に伝わり、秋のみ一般公開される「極楽地獄図」(詳細)は、京狩野の祖となる狩野山楽の作。奈良でもこの一派の作品を拝見することができます。また改めてじっくりと拝見したいです!