コミュニティデザイン―人がつながるしくみをつくる
地域の課題を地域の人たちが解決する「コミュニティデザイン」の実践例を掲載した一冊
ある地域の課題を、地域に住む人たちが解決するための「コミュニティデザイン」の実践例を多数掲載した一冊。筆者の山崎さんは、これまでたくさんの案件に関わってきた第一人者で、まちづくりのワークショップ・住民参加型の総合計画づくり・建築やランドスケープのデザインなどに関するプロジェクトに取り組んできた方です。
説明文:「新しくモノを作るよりも「使われ方」を考えること。全国で使い手のつながり、コミュニテイのデザインを切り拓いた著者の全仕事。」
公園を作るプロジェクトを例にとると、以前は予算の大半が最初の建設費として投入され、あとはご自由にお使いくださいというスタイルでした。しかし、こうして完成されたものを渡されると、結局は使われないまま放置され寂れていくものです。
そこでアプローチを変え、公園の建設段階から地元の協力者を募り、「この公園で何をしたいのか」という話し合いを行い、ワークショップなどを繰り返し、単なるボランティアではないコミュニティの土台を作り上げます。それが軌道に乗れば、外部のスタッフが手を引いても自主的に良好な環境が維持されていくのだそうです。
もちろん、簡単なことではありません。この本には詳しいノウハウの解説はありませんが、明らかに大変なご苦労があることは伝わってきます。
何よりも大切なのは、まず地元の方々に溶けこむことですが、この役割に最適なのが、中高年から可愛がられやすい「学生さん」なんだとか。また、代々いがみあって来た離島の間のネットワークを築こうと思った時、大人を相手にするよりも子供たちを対象としてプロジェクトを進めるなど、いろんなパターンが見られます。
ちなみに、2009年に開催された「水都大阪」の運営にも、この方は関わっていらっしゃいました。事前にコミュニティを作り上げ、その後のまちづくり活動へと続けるはずが、イベント終了後、府と市と経済界が関係性についてもめている間に熱気が冷めてしまい、無に帰してしまったそうです。
この本を読む前でしたら、それが当然と思ったところですが、他の地域の活動例を見た後だと、それがいかに大きな損失だったかが分かります。
素敵だなと思ったのは、ある離島のコミュニティが自主的に発展して、イベントなどに高齢者の方をお誘いする「お誘い屋さんプロジェクト」を立ち上げたというエピソードです。こういう活動はもっともっと広がるべきですし、これからの時代にもっとも必要とされていることでしょう。
この他にも、デパートやマンション建築の際にコミュニティデザインの発想を取り入れる例なども紹介されていて、とても興味深かったです。まちづくりの新しい形に興味がある方はぜひ!