ニッポンの風景をつくりなおせ―一次産業×デザイン=風景
一次産業にデザインを加味してヒット商品に!地方物産の販売企画の参考にしたい事例集
高知県を拠点に活躍するグラフィックデザイナー・梅原真さんの仕事をまとめた、2010年に出版された一冊。一本釣りのカツオのデザインを変えることで、年商20億という大きな産業へと育った事例も紹介されています。
地方で不況にあえぐ一次産業に、新たなデザインワークを掛けあわせて「あたらしい価値」をつくる活動をなさっています。ひと昔前までは、地方の特産品というと素っ気ないパッケージだったり、土産物臭が漂うばかりで高価な印象だったりしたものですが、それをその地方独自のスローなプロダクトとして生まれ変わらせることで新たな生命を吹き込んでいます。
説明文:「土佐の一本釣りカツオ漁船の風景を守った「漁師が釣って漁師が焼いた」藁焼きたたき、地域の個性を逆手にとった「島じゃ常識 さざえカレー」、箱モノ行政バブル時代にTシャツを砂浜にひらひらさせた「砂浜美術館」、森林率84%の高知から発信する84(はちよん)プロジェクト………一次産業にデザインをかけ合わせて「あたらしい価値」をつくりつづける、グラフィックデザイナー梅原真が、デザイン誕生の現場を自ら書き下ろし、依頼人も写真付きで解説。」
この方は、見た目のデザインのみではなく、コンセプトデザインも手がけていらっしゃいます。田舎の製品は、あまりきれいにデザインしすぎても良さが消えてしまいますが、適度のバタ臭い感じがいいんでしょうね。どれも刺さるデザインになっています。
紹介されているのは、地元高知の製品がメインで、お茶・新聞紙を使ったエコバック・カツオ加工品・地栗・塩アイスなど、多岐にわたります。
その中で、私も見たことがあって、はっきりと覚えていたのが、沖縄の最北端の村・国頭村(くにがみそん)の観光ポスター群でした。メインは村に生息する昆虫たちの大写し(オリイオオコオモリ・キノボリトカゲ・ヤンバルテナガコガネなど)。そこに「やんばる ふんばる 国頭村」というコピーが大きく掲載されたものです。インパクト絶大で、ネットでもだいぶ話題になっていました。
「プロダクトは悪くないが売れない。」そんな製品は世の中にはいくらでもありますが、それを解決する緒になりうるのがデザインでしょう。奈良でも、中川政七商店さんなどが、上手にブランディングしていますし、個人レベルでもこうした活動をなさっている方が増えています。
月並みな言い方ですが、デザインの力、地方の力を再認識できる一冊でした。興味のある方はぜひ!
これは余談ですが、「間伐で日本の風景を作る」というページに、道路サインや公共サインに間伐材を使うという提言があり、「木+他の素材を組み合わせる」というアイディアが出されています。机の天板が木、足は金属のようなパターンですね。
私も身の周りでも、地元の木材を使用した木の家というコンセプトの家の提案は多いのですが、全部を木で作ろうとするため、デザイン的にイマイチに感じてしまうものが多いのです。建て替えられたばかりでしっくりこないお堂のような印象ですね。木とコンクリート(レンガでも鉄鋼でも)半々ぐらいの比率でデザインされたら素敵だと思いますので、どなたかよろしくお願いします!