大阪アースダイバー
中沢新一さんが古代地形図などから大阪の成り立ちを探る。興味深い考察が詰まった一冊です
人類学者・思想家の中沢新一さんが、古代の地形図などから、大阪という都市の成り立ちを探った一冊。東京編に続く、大阪編です。中沢さんご自身は山梨の生まれで、関西への土地勘は無いようですが、面白い考察の連続で興味深く拝読しました。
説明文:「南方と半島からの「海民」が先住民と出会い、砂州の上に融通無碍な商いの都が誕生・発展する。上町台地=南北軸と住吉~四天王寺~生駒=東西軸が交差する大地の一大叙事詩を歌いあげる。」
なお、タイトルにもなっている「アースダイバー」という言葉ですが、紹介文の中にこう説明があります。
「著者は、心の無意識までを含んだ四次元の地図を作成する作業の全体を、「アースダイバー」と名づました。258万年前から現在にいたる地質の変遷を示す「第四紀地図」図と考古学の発掘記録、それに現代の市街図を組み合わせて、土地のもつ「本当の姿」を明らかにしていきます。またその作業には、古代人の心の構造を教える人類学、歴史学、心理学などあらゆる知が境界を越えて動員されます。」
この本を手にとったのは、先日読んでとても面白かった『聖地巡礼 ビギニング』(紹介記事)の共著者である宗教学者・釈徹宗さんがこの企画に大きく関わっていたと知ったためでした。私自身、大阪についての知識はほとんどありませんが、こういった切り口もあるのかと感心しています。
大阪の土地は、古くは南北に走る上町台地だけが地上にあるのみでした。古くから重要視されていた四天王寺や生國魂神社、磐船神社、住吉大社など、そして古代文化が栄えた河内地方は、ずっと海上にあった土地で、そこから眺められる生駒山も聖なる土地とされてきたそうです。
一方、他のエリアは後から誕生した砂州の上に登場しているため、商売や演芸が盛んになったのだとか。しっかりした大地の上に広がった東京とは、そういった成り立ちからして大きく違うとしています。
学術書ではありませんので、この本で語られることすべてが真実とは思いませんが、古代からの流れを読み解いていくと、現代の大阪らしさの根っこが発見できて、腑に落ちる思いですね。やや難解な表現もありますが、とても興味深い内容でオススメです!