聖地巡礼 ビギニング
内田樹・釈徹宗両氏の移動対談。宗教性をみがく、ちゃんとした「聖地巡り」です!
思想家・内田樹さんと宗教学者・釈徹宗さんが、対談しながら聖地をめぐり歩き、そこで語り合った内容をそのまま本にする……という、ぬるいような荒っぽいような企画です。
聖地という言葉も、パワースポットという言葉も苦手な私にとって、このお二方も決していいイメージを持っていなかったのですが、とんでもないですね。とても面白かったですし、変な言い方ですが、ちゃんとなさってます(笑)
説明文:「出かけよう、宗教性をみがく旅へ!思想家であり武道家の内田樹と、比較宗教学者で僧侶でもある釈徹宗が、日本人が失っている霊性を再生賦活すべく、日本各地の「聖地」を旅する新シリーズ。第1巻となる今回は、大阪の上町台地を縦走し、京都で異界のトビラを開き、奈良で日本の「子宮」ともいうべき、三輪山を訪れる。」
このお二方(と巡礼部の方たち)が、実際に聖地を巡りながら、その内容を収録しています。ややこしい単語もたくさん出てきますが、移動しながらのトークなので深くなり過ぎず、とてもいいバランスを保っています。
巡った場所は、大阪城や四天王寺が近い大阪・上町台地、死者が捨てられた場所だった京都・蓮台野と鳥谷部、本書で「日本の子宮」と呼ばれている奈良・飛鳥と三輪山。聖地でご利益を……などというものとはまったくベクトルが違い、静かにその土地の霊性を感じ、宗教性をみがいていきます。
語られるエピソードもとても興味深くて、「関東の振興教団は、本部を富士山に置きたがる。関西なら生駒山。」とか、村上春樹さんの小説を引用したり、能や河瀬直美さんの映画の話になったり。
パワースポットと呼ばれる場所に立って「ピリピリくる」という感覚は、あまり人と共有しづらい部分ですが、その土地のルーツなどを解き明かしていくと、決して気のせいでも何でもないことが理解できます。単に感覚的に感じるだけではなく、私のようなオッサンにとっては、こうして理屈を述べてもらうと腑に落ちやすいんですね。
とても興味深い内容でしたので、パワースポットと聞いて顔をしかめていた方も、ぜひ手にとってみてください!