2014-05-17

南北朝の動乱 (戦争の日本史8)

複雑怪奇な「南北朝時代」について。敵味方が入れ替わって争う時代背景が解説されます

朝廷と武士がふた手に別れ、敵味方を入れ替えながら争った「南北朝時代」。時期によってめまぐるしく状況が変わるため、とても把握しづらい時代です。『南朝全史-大覚寺統から後南朝まで』(紹介記事)に続いて読んでみましたが、やはり複雑怪奇な時代ですね。


説明文:「日本が経験した未曾有の大転換期=南北朝時代。二つの朝廷と複雑な勢力抗争が絡んだ動乱はなぜ全国に広がり、半世紀以上に及んだのか。個性豊かな人物像とその時代に迫り、南朝が大きく顕彰された近代史にも言及する。」


南朝側の後醍醐天皇、護良親王、後村上天皇、宗良親王、楠木正成・正行、新田義貞、北畠親房・顕家、名和長年などはともかく、停止されたり復活したりした北朝側には、光厳天皇、光明天皇、西園寺公宗が。

室町幕府を設立した武人たちも、足利尊氏・直義・直冬、佐々木道誉、高師直・師泰、赤松家・細川家・上杉家など、登場人物が、状況によって立場を変えて争うのですからややこしい。ずっと南朝と敵対していたはずの足利尊氏でさえ、一時は南朝に下って弟の直義と戦ったりしています。

理由の一つとして、まだ朝廷が南朝北朝に別れたことで、幕府内はもちろん、守護大名の家の中の揉め事もふた手に対立しやすくなってしまったことが大きかったとか。状況不利と見れば、保身のためにすぐさま敵方へ寝返っていたそうです。

また、この時代もまだ呪術的なものは信じられていて、僧侶たちも敵を打ち負かすための祈祷を続けていましたし、後醍醐天皇の怨霊によって災いが振りかかると信じられていたため、鎮魂のための仏事は続けられていました。こうした戦乱の背景についても記されているのが面白いですね。

決して読みやすい本ではありませんが、南北朝の騒乱の流れが把握しやすくなっていますので、じっくり取り組みたい方にはおすすめです。「戦争の日本史」というシリーズの8冊目ですが、前後は別の方が執筆なさっていますし、順番に読む必要もありませんので、ここから手を出しても大丈夫ですよ。

なお、ここからは個人的なメモ代わりに。

1348年、河内で楠木軍を撃破した高師直・師泰軍は、南朝の本拠だった吉野へ進軍。後村上天皇らが賀名生に逃れたあとだったため、皇居や公家たちの邸宅のみならず、金峯山寺にも火をかけ、本堂の蔵王堂が燃え落ちただけではなく、さんざんな狼藉に及んだとか。

ちなみに、補佐役として足利尊氏を支えた高氏は、飛鳥時代の高市皇子を祖とする一族なのだとか。高市皇子好きな私としては、複雑な気分です(笑)


【南北朝の動乱 (戦争の日本史8)】の関連記事

  • 『遣唐使 阿倍仲麻呂の夢 (角川選書)』~阿倍仲麻呂の生涯に、万葉学者・上野先生が真っ向から挑んだ力作!~
  • 『応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)』~ややこしい京都の大乱を扱いながら、大和の描写も多く読み応えあり!~
  • 『歴史のなかの大地動乱――奈良・平安の地震と天皇 (岩波新書)』~奈良時代に頻発した地震は宮廷にどのような影響を与えたのか?良書です!~
  • 『六国史―日本書紀に始まる古代の「正史」 (中公新書)』~6つの国史についてエピソードとともに分かりやすく解説。良書!~
  • 『怨霊とは何か - 菅原道真・平将門・崇徳院 (中公新書)』~中世の人々にとって怨霊とはどういう存在だったのかをわかりやすく~
  • 『寺社勢力の中世―無縁・有縁・移民 (ちくま新書)』~公家と武士に匹敵する力を持った中世の寺社。その成立過程を解説した良書~
  • 『正倉院文書の世界―よみがえる天平の時代 (中公新書)』~行政から写経所の衣食住まで。正倉院文書をわかりやすく解説した良書~
  • 『歴史のなかの石造物: 人間・死者・神仏をつなぐ』~石仏や五輪塔などが造立された歴史的背景について解説。やや難解でした~
  • 『将門伝説の歴史 (歴史文化ライブラリー)』~叛逆者・英雄・祟り神。丁寧に文献にあたり平将門の乱とその後を解き明かした良書です~
  • 『平安朝 皇位継承の闇 (角川選書)』~暴虐や狂気じみたとされる、平城・陽成・冷泉・花山天皇らの真の姿を検証。興味深いです~
  • 『跋扈する怨霊―祟りと鎮魂の日本史 (歴史文化ライブラリー)』~オカルトではなく、非業の死を遂げた人物が「怨霊」とされる過程を解き明かした真面目な一冊~
  • 『検証 平城京の政変と内乱 (学研新書)』~長屋王や藤原広嗣など、奈良時代の六つの政変を独自の視点から解釈。気づきのある一冊~






  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ