2014-05-04
南朝全史-大覚寺統から後南朝まで (講談社選書メチエ(334))
吉野山中に拠点を置いた「南朝」について通説。ややこしい状況を分かりやすく解説した一冊
いわゆる「南北朝時代」に、京都を離れて吉野山中に拠点を置いた「南朝」について通説した一冊。
奈良と縁の深い歴史上の大事件ですが、その時代背景をほとんど知らなかったため手にとってみました。鎌倉時代末期~室町時代初期は、政治状況が二転三転するため、とても把握しづらいのですが、南朝に絞って解説されていることで、とてもわかり易かったです。
説明文:「謎多き南朝。その実像は、政治・文化的実体をともなった本格政権だった。劣勢を余儀なくされながら、吉野山中になぜ長きにわたり存続できたのか。あらゆる史料を博捜し、「もう1つの朝廷」200年の全過程を明らかにする。」
南朝というと、建武の新政に失敗し、足利尊氏と対立した後醍醐天皇が吉野山へ隠れ、それ以降は細々と続いていた……というようなイメージですが、それだけではこの体制が200年も続くはずがありません。一時は大宰府を完全に支配下に置くなど、しっかりとした基盤があったからこそ永らえたのだそうです。
この時代を語るとなると、明治時代の南北朝正閏問題(どちらが正当か)の影響があったり、北朝に比べて極端に資料が少なかったりというハードルがあります。不明な点も多いながらも、再興を目指して戦っていたことは理解できました。
後醍醐天皇・護良親王・楠木正成・楠木正行・後村上天皇・長慶天皇・後亀山天皇など、判官びいきかもしれませんが、登場人物にいちいち肩入れしたくなるのも不思議ですね。
歴史的な知識は必要ですが、この時代の南朝の動きを詳しく知るためには最適な一冊ですね。もっと詳しく調べてみたいですし、この本は時間を置いて再読したいと思います。