日本の国宝、最初はこんな色だった (光文社新書)
東大寺大仏殿もカラフルだった!古美術品のデジタル復元の裏側は大変な作業の連続です
「美術のゲノム」というテレビ番組で、貴重な古美術品のデジタル復元を担当していた方のご著書です。
金・赤・青など、鮮やかな色彩に埋め尽くされていた「東大寺大仏殿」、狩野永徳の「檜図屏風」、さらに地獄草紙・平治物語絵巻・花下遊楽図屏風など、現代ではもとの姿や色彩が判別できなくなった作品を、さまざまなデータを調べてながら再現していきます。
説明文:「実はカラフルだった大仏殿、ロウソクの下で蠢く地獄絵図......。学術的な根拠にもとづきながら、作品誕生当初の色彩に復元すると、作者の気持ちや時代の空気が見えてくる。さらに、デジタル技術で実物大のレプリカ作品を作り、ガラス越しでなく身近に作品と接してみよう。私たちは、往時の人びとの目線----屏風やふすま絵など、日常生活に美術を取り入れてきた伝統----を体感することができる。本書は「地獄草紙」「平治物語絵巻」、そして狩野永徳「檜図屏風」などの国宝作品を題材に、私たちの美術観・時代認識に修正を迫る意欲作である。」
筆者は、古い美術作品について、「観察するのを黙読とするならば、復元作業は精読、あるいは音読のようだ」と述べています。一般人が作品鑑賞するレベルではない、緻密な観察が必要なのは当然ですし、それを何度も何度も繰り返すことで見えてくるものもあるのでしょう。すごい世界ですね。
すっかり見慣れた現代の東大寺大仏殿も、創建当時の姿が再現されていますが、まばゆいばかりの極彩色です。また、現代のお顔とは違い、もっと丸みを帯びた輪郭だったのではという推測から、顔つきも少し変えられています。現代の落ち着いた色彩に慣れきっている私たちにとっては、色んな面で想像しづらいことばかりで、とても斬新ですね。
とても面白い内容でしたが、新書サイズでは図像が小さく、どうしても細部まで読み込めないのが残念です。もっと大きなサイズで見てみたかったですね。内容は面白いですから、興味のある方はどうぞ。