大和し美し―川端康成と安田靫彦
著名な文学者と日本画家が日本の美を通じて交流した記録。まさに「文化人」という世界です
ノーベル賞を受賞した文学者・川端康成さんと、日本の歴史を題材にした作品を描き続けた日本画家・安田靫彦(ゆきひこ)さん。日本の美を愛するお二人は、親しい交わりを続け、お互いに蒐集した美術品などを披露し合ったりしていたとか。
本書は、2008年に「MIHO MUSEUM」で開催された同名の企画展の関連書として出版されたもので、お二方の愛蔵した品や、自ら手がけた書画の作品などを集めて掲載してあります。
私は日本文学には疎いので、川端康成さんの作品などはほとんど読んだことがありませんが、「額田王」など安田靫彦の作品は大好きですので、図書館で見つけて何気なく手にとってみましたが、とても興味深い内容でした。
説明文:「良寛の辞世の句に導かれ、文豪川端康成と画家安田靫彦の魂が触れ合う。安田靫彦愛蔵の良寛の書、安田靫彦作品、珠玉の安田・川端コレクション。」
冒頭から驚いたのは、川端さんの所蔵品の豪華さです!戦後の混乱で、日本の美術品が今では考えられないほど安値で市場に出回ったりした時期があったことは知っていましたが、池大雅と与謝蕪村の共作「十便十宜図」を所有なさっていたんですね。今では国宝に指定されているほどのものです。昔の一流と呼ばれる文化人の方たちのすごさが感じられるエピソードですね。
また、お二方とも、江戸時代の僧・良寛さまに傾倒していて、その書画を熱心に研究・蒐集していたというのも驚きました。私は新潟生まれなので、越後生まれの良寛さんについては、(特に詳しいわけではありませんが)特に親しみを抱いています。そこに安田靫彦さんとの接点が出てくるとは思っていませんでしたので、こういった意外な流れは面白いですね。またこのラインをたどって、あれこれ調べていきたいと思います。
本書は、基本的に展覧会の関連書のため、もうなかなか手に入らないかもしれませんが、興味のある方は探してみてください。