色とかたちが奏でる美 富本憲吉のやきもの (小学館アート・セレクション)
安堵町生まれの偉大な陶芸家の代表作130点を紹介。華やかな更紗文様は見事!見惚れます
奈良県の安堵町で生まれた、人間国宝の陶芸家・富本憲吉の作品を解説した一冊。富本憲吉の生涯や作品の特徴など、豊富な画像を用いて紹介しています。ビギナー向けで、テキストよりも画像中心のため、とても分かりやすいですね。どのような作風の方なのか把握するのに最適な内容でした。
説明文:「世界的な陶芸作家の代表作130点を、美しいカラー写真で収録。英国留学体験やインド・朝鮮美術に影響をうけ、情熱的な作陶活動を展開し、やがては人間国宝にいたる富本の足跡を、数々の傑作とともに紹介する。鮮やかな色彩、曲面の織りなす調和。陶芸に、初めて個性の美を探求した、人間国宝・富本の小伝と代表作130余点。」
富本憲吉は、生涯で安堵町・東京・京都などを移り住みました。作風も様々で、素朴な焼き物から始まって、白磁・色絵磁器・金銀彩磁器など、次第に華やかさを増していったことが分かります。若いころの民藝作品らしいものにも惹かれますが、鮮やかな色彩で草木などを書き込んだ色絵磁器は素晴らしいですね。
そして、金銀を用いて細かな連続した更紗文様を描いた作品は、さらに見惚れてしまいます。代表的な文様としては、菱型が連続する「菱文様」や「四弁花」(安堵町の町花にもなった「テイカカズラ」の花がモチーフ。本来は五弁だが、連続して描くため四弁にしてあるとか)。そして、細やかなシダの葉を描き込んだ「羊歯文様」などがあります。
白磁の白に、赤・緑・金・銀が華やかですが、全体を落ち着けるためか白を残してある部分も多く、何十年後に見てみても素晴らしいデザイン性です。
富本憲吉の生家を展示施設にした、安堵町の「富本憲吉文化資料館」は、現在変則的に開館していますが、「※本館は、約1年の期間限定開館のため、平成26年2月28日(金)にて閉館致します。」とアナウンスされていて、閉館となることが決定しています。この本で紹介されていた作品の実物が見られるはずですから、ぜひ行っておこうと思います!