古代天皇への旅: 雄略から推古まで
古の日本を統べた天皇たちを、史書や地名、発掘成果などの様々な角度から紹介した良書
日本古代史の研究家、和田萃(あつむ)さんのご著書。雄略天皇から推古天皇まで、古代の天皇の事績を時代順に追い、歴史書の記述、現在の景観、発掘調査の結果などを織り交ぜながら分かりやすく解説しています。
前著の『歴史の旅 古代大和を歩く』(紹介記事)がとても面白かったのですが、個人的にはテーマ的にもこちらの方が楽しめました。
説明文:「ワカタケル=雄略から推古まで、古代天皇の姿を追いながら描く大和飛鳥。『万葉集』や記紀を読み解き、現在に伝わる景観や地名に古代の名残を訪ねる。発掘成果や歴史エピソードも織り混ぜ、日本の源流に想いを馳せる。」
本書は以下のような構成になっています。
1.大和の王たちの伝説
雄略天皇、清寧天皇と飯豊皇女、武烈天皇
2.新皇統への交代
継体大王、安閑天皇、宣化天皇
3.仏教伝来と内乱
欽明天皇、敏達天皇
4.飛鳥の都へ
用明天皇、聖徳太子、崇峻天皇、推古天皇
清寧天皇や武烈天皇など、資料の少ない古代の方々について、しっかりと触れられているのがいいですね。
例えば史書に極悪非道の人物として描かれる武烈天皇に関しては、まずは初瀬で営まれた王宮について触れ、その近くにあったと考えられる十二柱神社や海石榴市、影媛と平群鮪の悲恋、その地で営まれた烏土塚古墳の話題などが続きます。そのいずれもが著者が現地で見た光景や、調査の際の具体的なエピソードなどが盛り込まれています。
この時代を扱った本は、どうしても専門によって傾向が出てしまいます。それはそれで悪いことではありませんが、本書は史書の記述、判明している事実、地名や言い伝えなど、古代の天皇を扱ったものにしてはとてもバランス良く考察されていて、読み物としても十分に楽しめました。
決して古代史の初心者さんにお勧めできるような内容ではありませんが、奈良や古事記・日本書紀がお好きな方にはこの時代へ興味を持ち始める入口になるかもしれません。ぜひ手にとってみてください!