かわいい江戸絵画
話題になった展覧会「かわいい江戸絵画」の図録が書籍化されたもの。ゆるくて可愛いの宝庫!
2013年に開催されて、斬新さが話題になった展覧会「かわいい江戸絵画」。その図録が書籍化されて一般発売されたものです。
円山応挙の犬、歌川国芳の猫、森狙仙の猿、仙厓や白隠の力が抜けるような禅画、与謝蕪村の俳画、観たこともない虎の絵をほぼ想像で描いたもの、自由に遊びまわる子どもたちを描いたものなど、様々なテーマの可愛い絵画が集められています。
説明文:「2013年春、府中市美術館で開催され、その視点の斬新さで大反響を巻き起こした展覧会図録をついに書籍化! ニッポンの宝「かわいい」……その黄金期を江戸時代に見い出し、歴史と造形論理をここに解明。 伊藤若冲の《河豚と蛙の相撲図》と、更なる若冲の新発見作品など2点を加えた計3点を新たに収録。すでに図録に掲載された作品の新規撮り直しも加え、内容と画質は更に充実。」
日本では芸術作品を「かわいい」といった視点で観ることは少なく、芸術的な作品よりも一段低いものと認識されてきました。応挙の子犬などは毛並みのふわふわした感じまで伝わってくる素晴らしい作品にも関わらず、「こんな一面もありました」という扱いを受けてきたそうです。
人がかわいいと感じるシステムには、色んなパターンが考えられるそうですが、その一つの要素として「素朴」があります。当時の絵師はかわいいを意識して描いていなくても、時代が変わって素朴さを感じられるようになると、その瞬間からかわいいへと変容するんですね。
たくさんのかわいい作品を眺められてとても楽しい内容でしたが、改めて円山応挙のすごさに気付かされたような気がしました。楽しそうに遊びまわる子犬を、単なる写生ではなく、絶妙な間引き方で線を減らして描いています。まさにキャラクター化ですね。後々の時代まで、子犬を描く際の「応挙スタイル」のような形で手本にされていったというのも当然でしょう。
また、この本を観て、19世紀の初頭ごろに仙台で活躍した絵師「東東洋(あずまとうよう)」(Wikipedia)方の絵に引き込まれました。この方の作品のかわいさが程よく、鹿を多く描いていたりするのにも親近感を覚えます。
月並みな言い方ですが、現在の「kawaii」を見るまでもなく、日本人のかわいいもの好きは脈々と受け継がれてきたんですね。感心しながら共感できる作品集でした!