もっと知りたい上村松園―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
女性目線の美人画を描き続けた上村松園さんの作品を解説。図板も豊富で分かりやすい!
明治~昭和にかけて、女性の目線からの美人画を描き続けた画家「上村松園」さん(Wikipedia・画像検索)の作品を分かりやすく解説した一冊。110点ほどの図版を用いて、その生い立ちや特徴などを見せてくれます。
説明文:「美人画家として絶大な人気を誇る上村松園。 松園の正確で強い線や、細部までおろそかにしない丁寧な彩色、 美しい情趣の中にも深い内面性を感じさせる作品は今も私たちを引きつけます。生涯を大きく7つの期に分けて解説し、古き良き京都の風土や、激動の時代を背景として、 随所に、松園の人柄がしのばれる言葉、松園の芸術を創った母や師たち、 厳しい絵の修業や制作にまつわるエピソードなどをおりまぜ、松園という人間の本質と、作品が持つ力の秘密に迫ります。図版110点余収録。オールカラー。年表など詳しい資料も収録。」
松園さんは徹底して美人画のみを描いた方ですが、改めて時代別に作品を見ていくと、だいぶ雰囲気が変わっていっていることが分かります。代表作とされ本書の表紙にも用いられている「序の舞」や、赤子を抱いた「母子」などは、女手ひとつで育ててくれた母が亡くなった後のもの。松園さんは息子たちの世話は母に任せっきりで画業に専念していたというエピソードはよく聞きますが、その存在の大きさが伝わってきます。
初期の頃のややおぼこい雰囲気の女性たちも素敵ですし、いかにも松園ワールドですね。本書中で紹介されている、髪型などの時代考証は完璧だった、ほとんどモデルは使わなかったといったエピソードも面白かったです。
また、同時代に美人画を描いた、東京の鏑木清方との比較も面白かったですね。あふれんばかりに京都の雰囲気が伝わってくる松園さんの作品と比べて、鏑木清方の「朝涼」で描かれた少女は、いかにもハイカラで清らかです。「粋」と「はんなり」の違いがはっきりと感じられます。
ちなみに、松園さんは生まれも育ちも京都の方。太平洋戦争の際に、息子・上村松篁(しょうこう)が使用していた、奈良平城の画室「唳禽荘(れいきんそう)」へ疎開。最初は渋っていたものの、自然豊かな環境がすっかり気に入り、終の棲家としたそうです。この松篁さんも花鳥画の大家であり、初の親子二代の文化勲章受章者になりました。奈良には「松伯美術館」という美術館ができています。
本書でももちろん、最初から最後まで美人画ばかり。他のものには絶対に真似できない独得の世界が広がっていますので、興味のある方はぜひ!