もっと知りたいエミール・ガレ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
アール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸家の作品を解説。怪しげで過剰な美があります
19世紀後半にフランスで活躍した、アール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸家「エミール・ガレ」の作品を紹介した「アート・ビギナーズ・コレクション」シリーズの一冊。
あらゆるテクニックを駆使して、華やかな色彩と装飾のガラス製品を作り上げた方で、その作品の怪しげな魅力に目を奪われます。個人的には装飾過剰すぎてあまり好みではありませんが、よくテレビ番組「開運!なんでも鑑定団」などで作品を見かけるため、ふらりと読んでみました。
ガラス工房の跡取りとして生まれた彼は、1878年のバリ万博で伝統的な文様の作品が高く評価され、世に出ます。その後、ヨーロッパを席巻したジャポニズムの魅力に取り憑かれ、東方趣味を全面に押し出した作品を発表。その後、タブーとされていて誰も挑む者のなかった黒を使うなど進化を続けていきます。
どの時代の作品もすごいのですが、晩年に飴細工のような技術を用いた立体的な作品群は、もう気味が悪いほどの迫力と魅力があります。花瓶にカブトムシやユリの花、タツノオトシゴや人間の手を立体的に表現していたりと、ガラスの透明感と相まって狂気的な印象すら受けます。
一時は高い評価を受けた彼の作品も、一時は悪趣味の代表のような扱いを受け、ヨーロッパでは1960年代から、日本では1980年代から再評価されたのだとか。有名になりすぎた現代アーティストの宿命なのかもしれませんね。
本書では、彼のガラス工芸品を時代ごとに紹介し、分かりやすく解説を加えるだけではなく、巻末に彼が使用したテクニック(アンテルカレール(挟みこみ)・ヴュラージュ(気泡を発生させること)など)をまとめて掲載しているのも親切ですね。ガラス作品以外にも、家具デザイナーであり、アートディレクターであり、自らの工房を切り盛りした実業家でもあったという側面も紹介されています。
決して今日的な作品群とは言えないかもしれませんが、怪しげな雰囲気のアール・ヌーヴォーの傑作を観てみるのも楽しいです!