赤瀬川原平の日本美術観察隊 其の1
赤瀬川原平さんが日本美術を「観察」。絵画・器・土偶・仏像などノンジャンルで面白い!
芥川賞作家であり、路上観察の結果を「超芸術トマソン」として世に知らしめた赤瀬川原平さんが、日本の100の美術作品について語った一冊。
2003年に発売されたもので、当時『再現日本史』という週刊誌に連載していたもの。編集部から日本美術の作品(絵画・器・土偶・仏像などなど)が送られてきて、それらを「鑑賞」するのではなく、出来るだけ下調べせずに「観察」することを目指したそうです。筆者は西洋絵画などに親しんだ期間が長く、ずっと日本美術を身近に感じられなかったとか。本書ではその異物感を受け入れるように観察しており、ユニークな切り口が面白かったです。
説明文:「名品100を堪能!赤瀬川流・日本美術講座美術家で芥川賞作家、老人力・路上観察の達人、赤瀬川原平が、縄文土器から仏像、琳派、浮世絵、近代洋画までの魅力を語り尽す、オールカラー版・日本美術案内。五感で味わう“日本の美”。町並みに黄金を敷き詰めた「洛中洛外図」、若者ファッションの元祖「風神雷神」、石の庭園がなぜ怖いのか。」
本書で扱われるのは、ありとあらゆるジャンルの日本の美術品たち。時代順に並べたりせず、特に意図もなくずらりと名品が並んでいます。
絵画では、洛中洛外図屏風・燕子花図屏風・地獄草紙・みかけハこハゐがとんだいゝ人だ・長崎大殉教図・鳥毛立女屏風・一休宗純像・山中常盤物語絵巻など、ありとあらゆるタイプのものが集められています。さらに建築(大浦天主堂・京都御所・伊勢神宮など)、工芸(変わり兜・根付・南蛮風陣羽織・芦穂蒔絵鞍など)、さらにはハート形土偶や円空仏、チブサン古墳石棺の壁画、百済観音像、旧江戸城写真帖、志賀島で見つかった金印などなど。
いずれもとても興味深いものばかりですが、美術解説書のようにあまり深入りするのではなく、やや距離を保ったままそれらを観ています。細部を眺めてみたり、似ているものを探したり、これが何も告げられずに別の時代に持って行かれたら……と想像したり、自由な美術作品との付き合い方ですね。その姿勢が新鮮ですし、ほぼランダムに登場する色んな美術品を見ているだけでも楽しいです。
なお、本書は続編に当たる『赤瀬川原平の日本美術観察隊 其の2』と対になっています。こちらでは明治期の油絵や、信貴山縁起絵巻・写真掛け軸・旧金毘羅大芝居など、また面白いものが取り上げられていますので、合わせて読んでおきたいと思います。
美術がお好きな方はもちろんですが、あまり興味がなかった方も入りやすいと思いますので、気になった方はぜひ。