日本の素朴絵
ゆるキャラ・ヘタウマのルーツと思える「素朴絵」の作品集。愛らし可笑しみがあります!
マンガ・ゆるキャラ・ヘタウマのルーツとも思えるような、日本の古典絵画に描かれた「素朴絵」を集めた作品集。絵師の技術が足りないケースもあると思いますが、古くから日本人は素人が描いたような下手な(=ゆるい)絵を愛でる心持ちがあったことを気づかせてくれます。私自身は特にゆるキャラが好きだったりしませんが、この本で紹介されるような素朴絵は大好きですね!
説明文:「いにしえから続くゆるくてかわいい素朴絵の系譜。室町時代のお伽草子にみる稚拙で愛らしい作品や、庶民のために制作されたぬくもりのある社寺縁起絵巻・大津絵、白隠や蕪村ら知識人が描いた自由な禅画や俳画……。リアリズムを突き詰めない、稚拙にも見える素朴な絵は、なぜか人の心を魅了します。写実の対極をゆく「ゆるい美」を認識できる文化は、日本に古くからありました。その「素朴絵」の系譜をビジュアルでたどります。」
本書では、「絵巻と絵本」「大画面の中の素朴」「庶民信仰の温もり」「庶民のための素朴絵」「知識人の素朴」「工芸の素朴美」という6つのパートで構成されています。
仏教絵巻であろうと地獄絵であろうと、下手な絵が描かれていては台なしのような気もしますが、下手な作品が今に伝えられていて、しっかりと美術館に収蔵されていること自体が面白いですね。子供の絵日記レベルのようなものもあったり、妙な可笑しみを感じます。大津絵や白隠、与謝蕪村など、この素朴絵の系譜をたどって行くのも面白そうですね。
古くから中国の文化を受け入れてきた日本ですが、中国やヨーロッパの絵画が「リアルに描くこと」を追求していったのに比べて、日本では逆のベクトルの作品も数多く遺されました。意図したものかどうかは分かりませんが、可愛さやゆるさを求める文化なんでしょうね。海外の方たちにこの本を見せて感想を聞きたいくらいです(笑)
ちゃんと作品の解説や、文化的な背景についての説明などもあり、単なるクスッと笑える本ではなく、考えながらニヤニヤできるようになっています。図書館で借りてきたものですが、個人的に手元に置いておきたいと思わせるような一冊でした!