吉田初三郎の鳥瞰図を読む
空からの視点で名所を描く「鳥瞰図」の偉人の作品集。見てるだけで楽しい充実の一冊です!
大正から昭和にかけて、空高くの視点から地上を眺めた「鳥瞰図(bird's eye view)」を描いた絵師「吉田初三郎」(Wikipedia・画像検索)の作品と解説をまとめた、魅力いっぱいの一冊。収録点数も多く、もう完全版といってもいい充実度ですね。
吉田初三郎の鳥瞰図は単にその土地を描くだけではなく、デフォルメを加え、情報を整理し、とても見やすく美しいのが特徴です。観光案内図として、軍事目的で、旅行ガイド本用になど、航空写真の技術が発達する前は、こうした鳥瞰図への需要は多かったようですが、その土地の素晴らしさを別アングルから伝えようとする意気込みまで感じられるのですから、彼の作品が後に再評価されるのも当然でしょう。
説明文:「大人気のパノラマ絵師・吉田初三郎。その画業の紹介とともに、初三郎の描く近代日本の風景を、新たな視点から読み解く画期的な1冊。貴重な初公開資料満載。
皇太子時代の昭和天皇に「これは奇麗で解り易い、東京に持ち帰って学友に頒ちたい」というお褒めの言葉を賜った、稀代のパノラマ絵師・吉田初三郎。初三郎の仕事を都市・建築・美術の歴史を横断するまなざしで俯瞰。「形態分析」の手法を用いて、制作者の論理を読み解く画期的な論稿。」
鳥瞰図を観ていると、同じ土地を描くにしても、それぞれ視点やテーマを変えたり、魚眼的な描き方をしたりと、それぞれに工夫が見て取れます。政府や鉄道会社、ホテル、新聞社などの発注を受けて制作する商業画でありながら、いま見ても美しいの一言ですね。
本書では、約150ページにわたって、詳細な文章と大量の作品画像を掲載しています。惜しむらくは、やはり鳥瞰図は大きなサイズで描かれることが多いため、その細部までじっくり観られないのが残念ですね。
私は以前、新しく印刷された奈良市街の鳥瞰図を購入したこともありましたが、やはりとても楽しいもので、ずっと飽きずに眺められます。吉田初三郎の作品は、大阪・堺市美術館や愛知・東浦町郷土資料館などに多数収蔵されているようですから、ぜひ観に行ってみたいと思います!