2013-08-03

深読み! 日本写真の超名作100

日本の写真の歴史を101点の名作で解説。芸術や報道写真の流れが把握できる面白い一冊です

1850年から2011年まで、日本の写真史に残る名作を101点収録した一冊。それぞれ見開き2ページになっており、写真評論家・飯沢耕太郎氏の解説が1ページつきます。私は写真のことはまったく詳しくありませんが、江戸末期の試行錯誤の時期から現代までの作品が見られ、おおまかな流れが把握できるのがいいですね。


説明文:「 写真の見かたがわかる! 「絶対に見ておきたい写真」を100点以上紹介!写真大国の日本ですが、草創期の写真を見る機会はそう多くありません。しかし先人の名作を見ずして写真は語れないと言い切れるほど、写真の原点がそこにあります。日本人の手による最古の写真から現在に至るまで、たいへん貴重な「超」名作写真の数々を写真評論家飯沢耕太郎の解説とともに紹介します。」


フランスで世界最初の実用的な写真技法が発表されたのが1839年のこと。その文献が日本に伝わって試行錯誤の末に、初めて日本人が日本人を撮影したのが1857年だったそうです。その写真に写っているのは薩摩藩主の島津斉彬公、撮影はその家臣である宇宿彦右衛門。当時の写真は長時間露光が必要で、被写体となる人間はじっとしていなければならなかったため、輪郭がぼけていますが、思ったよりもはっきりと写っています。

その後、戦争を記録する目的で発展していくに従って、次第にカメラの性能も増し、ただの記録用にとどまらず、芸術作品へと近づいていくのが分かります。

私は写真家さんの名前はほぼ知りませんが、木村伊兵衛・入江泰吉・土門拳・岡本太郎・荒木経唯・蜷川実花などの著名な方々の作品が網羅されていますし、これまで知らなかったドキッとするような切れ味の写真も何点も掲載されていました。

中でも、丸めた原稿が散らばっていて床も見えない仕事部屋でペンをとっている文豪・坂口安吾を写した作品は、なぜかずっと大好きで、雑誌の切り抜きを部屋に貼っていたほどでした。この作品は、1946年に林忠彦によって撮影された文士シリーズの一枚だったんですね。この頃の写真作品は、白黒の鋭い印象のものが多く、今見ても心が揺さぶられるようです。

最近では、カメラ側であれこれするよりも、パソコンを使っていくらでも加工できるため、ますます他の芸術作品との境界線は薄れているようですね。160年あまりの日本の写真の歴史を振り返ってみると、意外な進化と共通点が見られて、とても面白かったです。


『<$MTEntryTitle$>』より

『<$MTEntryTitle$>』より

『<$MTEntryTitle$>』より

『<$MTEntryTitle$>』より


【深読み! 日本写真の超名作100】の関連記事

  • 『イラストレーター 安西水丸』~急逝した安西水丸さんの作品集。独特のタッチ、とても好きです!~
  • 『「失われた名画」の展覧会』~失われてしまった西洋の名画たちを集めたユニークな美術本~
  • 『浮世絵に見る 江戸の食卓』~浮世絵に描かれた「食」の場面から見る江戸の暮らし。江戸が身近に感じられます~
  • 『かわいい絵巻』~絵巻物の「かわいい」を集めた一冊。真剣なのにゆるいものなど、日本人の伝統ですね!~
  • 『北斎娘・応為栄女集』~映画『百日紅』でも描かれた葛飾北斎の娘・お栄の作品集。夜の闇の描き方が見事です!~
  • 『分解してみました』~分解した機械部品を並べて、または落として撮影した不思議な写真集。機械部品って美しい!~
  • 『田中一村作品集[増補改訂版]』~奄美大島の風景を描き「日本のゴーギャン」と呼ばれた画家の大判画集。迫力あります!~
  • 『もっと知りたい田中一村―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)』~奄美大島を愛し「南の琳派」「日本のゴーギャン」と呼ばれた画家の作品を分かりやすく解説~
  • 『小林清親 東京名所図 (謎解き浮世絵叢書)』~「最後の浮世絵師」と呼ばれた小林清親の作品集。この時代独特の美しい風景が見事です!~
  • 『かわいい仏像 たのしい地獄絵』~快著「日本の素朴絵」の続編。不思議な仏像と素朴な地獄絵。愛らしいヘタウマの宝庫!~
  • 『百日紅 (上) (ちくま文庫) 』~葛飾北斎の娘・お栄を主人公に描く江戸風情。傑作!間もなく公開されるアニメ映画も期待!~
  • 『幻獣標本採集誌』~存在しない「幻獣」の標本をモチーフにしたアート作品集。手元に置きたくなる存在感!~


  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ