深読み! 日本写真の超名作100
日本の写真の歴史を101点の名作で解説。芸術や報道写真の流れが把握できる面白い一冊です
1850年から2011年まで、日本の写真史に残る名作を101点収録した一冊。それぞれ見開き2ページになっており、写真評論家・飯沢耕太郎氏の解説が1ページつきます。私は写真のことはまったく詳しくありませんが、江戸末期の試行錯誤の時期から現代までの作品が見られ、おおまかな流れが把握できるのがいいですね。
説明文:「 写真の見かたがわかる! 「絶対に見ておきたい写真」を100点以上紹介!写真大国の日本ですが、草創期の写真を見る機会はそう多くありません。しかし先人の名作を見ずして写真は語れないと言い切れるほど、写真の原点がそこにあります。日本人の手による最古の写真から現在に至るまで、たいへん貴重な「超」名作写真の数々を写真評論家飯沢耕太郎の解説とともに紹介します。」
フランスで世界最初の実用的な写真技法が発表されたのが1839年のこと。その文献が日本に伝わって試行錯誤の末に、初めて日本人が日本人を撮影したのが1857年だったそうです。その写真に写っているのは薩摩藩主の島津斉彬公、撮影はその家臣である宇宿彦右衛門。当時の写真は長時間露光が必要で、被写体となる人間はじっとしていなければならなかったため、輪郭がぼけていますが、思ったよりもはっきりと写っています。
その後、戦争を記録する目的で発展していくに従って、次第にカメラの性能も増し、ただの記録用にとどまらず、芸術作品へと近づいていくのが分かります。
私は写真家さんの名前はほぼ知りませんが、木村伊兵衛・入江泰吉・土門拳・岡本太郎・荒木経唯・蜷川実花などの著名な方々の作品が網羅されていますし、これまで知らなかったドキッとするような切れ味の写真も何点も掲載されていました。
中でも、丸めた原稿が散らばっていて床も見えない仕事部屋でペンをとっている文豪・坂口安吾を写した作品は、なぜかずっと大好きで、雑誌の切り抜きを部屋に貼っていたほどでした。この作品は、1946年に林忠彦によって撮影された文士シリーズの一枚だったんですね。この頃の写真作品は、白黒の鋭い印象のものが多く、今見ても心が揺さぶられるようです。
最近では、カメラ側であれこれするよりも、パソコンを使っていくらでも加工できるため、ますます他の芸術作品との境界線は薄れているようですね。160年あまりの日本の写真の歴史を振り返ってみると、意外な進化と共通点が見られて、とても面白かったです。