もっと知りたい円山応挙―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
写生派の祖・近代絵画の祖「円山応挙」の作品を分かりやすく解説。『雪松図屏風』すごい!
18世紀頃の京都画壇で、圧倒的な人気を博していたのが、「写生派の祖」「近代絵画の祖」とさえ呼ばれる円山応挙の作品と生涯を分かりやすく解説したアート・ビギナーズ・コレクションの一冊。私のような美術初心者にはぴったりの読みやすい内容です。
ここ最近は江戸絵画ブームですが、同時期に活躍した伊藤若冲や曾我蕭白などの奇想の画家たちが人気を博している一方で、応挙の名前はそれほど聞こえてきません。正直なところ、応挙の作品はベーシック過ぎる印象があり、私などはその凄みが理解できていませんでした。しかし、この本などで解説を読みながら見なおしてみると、革新的と言われた所以がはっきりと分かります。
説明文:「近年、リアリズム(写実)絵画が注目を集めていますが、その源流を探ると辿りつくのが江戸の天才絵師・円山応挙。絵画史の転機、新たな幕開けを告げる巨人、ここに登場!大乗寺のふすま絵など代表作、注目作をオールカラーで収録。」
円山応挙は、それまで日本画檀では軽んじられてきた「写生」を取り入れ、誰からも分かりやすい絵を描いてきました。それまでの絵画が、描かれた画題に込められたストーリーまでを理解して楽しむもので会ったのに対して、応挙の絵は観てそのまま楽しめるんですね。裕福になった商人たちがこぞって求めたというのも納得できます。
しかも、古典的な日本画の技術と、奥行きをもたせたり画面の形を変えたりして、ちょっとしたトリックアート的な見せ方もしているものもあるそうです。日本画の歴史の中で、大きなエポックとなったことは容易に想像できました。
応挙の作品では、うさぎや幽霊を描いたものも惹かれますが、圧巻はただただ雪景色の中に立つ三本の松を描いた『雪松図屏風』(国宝)でした。平板な屏風の中に、墨と金と紙の白だけで描いており、老いた松は力強く上下がトリミングされた形です。構図の大胆さに目が奪われるようです。さらに、まるで現代アートのように線だけで氷面の割れ目が伸びるさまを表した『氷図屏風』などもすごいですね。
私のような初心者には、このシリーズはとても分かりやすくて助かっていますので、興味がある方はぜひ手にとってみてください。最初は区別できなかった作者の特徴も、ちょっとずつ理解できるようになります!
余談ですが、同じ時期に別冊太陽などでも円山応挙が特集されていましたが、どうやら愛知県美術館で開催されていた「円山応挙展 ―江戸時代絵画 真の実力者―」(2013年3月1日~2013年4月14日)に合わせてのものだったようです。大乗寺の襖絵24面分が集められたりと、この本を読んだ今なら、ぜひ観ておきたかった内容ですが、残念ながら巡回はなし。あてもなく何年後かのチャンスを待たなくてはならないのが残念……。