籔内佐斗司 やまとぢから
彫刻家・籔内佐斗司さんの作品集。童子だけではない幅広い仕事が見られる良書です!
せんとくんのデザインを手がけたことで、一躍話題になった彫刻家・籔内佐斗司さんの作品集です。ベースになった「童子」作品群はもちろん、肉体をモチーフにした「鎧」シリーズ、連続性のある動物シリーズ、そして古代の伎楽の現代風復活を目指した「平成伎楽団」、芸大の教授として後進の指導にも当たっている仏像修復まで、その多彩な仕事ぶりが網羅されています。
なお、本書はすでに福井市美術館でスタートし、堺・群馬・奈良・横浜と巡回する「籔内佐斗司展 やまとぢから」(日程はこちら)に合わせて出版されたものです。
説明文:「20代に体験した仏像修復を通じて、森羅万象の命をあらわす“童子”シリーズを誕生させた籔内佐斗司。現在、東京藝術大学大学院文化財保存学教授として後進の指導にあたりながら、2010年には平城遷都1300年祭・公式マスコット“せんとくん”キャラクターデザイン、“平成伎楽団”プロデュースなど、人々の心に「やまとぢから」を呼び覚ます活動を展開し続けている。待望の最新作品集。」
薮内さんの作品は、良くも悪くもせんとくんのイメージがついて回りますが、じっくりと拝見すると、どれもパワフルな魅力が感じられます。初期の人間の肉体をモチーフにした鎧シリーズもいいですし、童子の作品もどれもいきいきとして、見ていて笑顔にしてくれそうな生命力を感じます。
個人的には、特にセミの幼虫から羽を持って生まれた「うつせみ童子」や、蓮の葉を高く掲げて一滴の水滴を飲もうとしている「朝露童子」などが好きですね。また、12体の秋田犬の像が円形に配された「犬モ歩ケバ(秋田犬)」、島根県立美術館など何箇所かに設置してある、ウサギの像を連続で配置した作品など、楽しいものが多いです。
後半には、「平成伎楽団」の活動の意味、仏像修復の例なども紹介されていますし、巻末には薮内さんがこれまで発表してきた文章をまとめて読めるのですが、これもとても面白かったです。
ぜひ「せんとくんの生みの親」ということを忘れて、ひとりの優れた彫刻家としての薮内作品に向き合ってみてください。私は奈良県立美術館で開催される「籔内佐斗司展 やまとぢから」(2013年10月19日~12月15日)に必ず行ってみたいと思うようになりました!