~遊郭経営10年、現在、スカウトマンの告白~ 飛田で生きる
飛田で10年間「親方」をやっていた方の記録。知れば知るほど不思議な世界です
今に残る赤線地帯、大坂・飛田。そこで10年間お店を経営した筆者が語る、リアルなドキュメント。『さいごの色街 飛田』と続けて読みましたが、全く別の種類の内容になっています。
筆者は、ちょうど親の遺産が手に入ったタイミングで、先輩から「飛田でお店を持たないか」と持ちかけられ、迷いながらも10年間も経営を続けた人物です。お店の届出や女の子の集め方、飛田のシステム、女の子やおばちゃんとのトラブル、ちょっといいエピソードなど、内部の方でしか書けない情報がたっぷりと紹介されています。
説明文:「今に生きる赤線地帯、遊郭の風情と隠微さを醸す歓楽の秘境・飛田新地。第三者ルポではない、経営当事者が初めて記す色街の真実!「ここがあったから、うちと家族は生きていけるんよ」関係者全員がこれまで頑なに口を閉ざし続けてきた街の、真実の姿―。飛田で生きて10年、すべてを見てきた親方自身が初めて赤裸々に明かす。」
私自身、この手の風俗本はほとんど読んだことがないので他と比較はできませんが、リアルな数字が明かされていたりして興味深いですね。文章もとても読みやすくて、サクサクと読み終えました。
飛田でお店を始める際に「月500万は稼げる」と言われたそうですが、リーマンショック以降は300万円にも達しないことも多かったとか。
●月に1000万円の売上があった場合 ・女の子に半分の500万 ・呼び込みなどを行うおばちゃんに1割の100万 ・家賃50万 ・求人広告費30万 ・光熱費や女の子の送り迎えのガソリン代などを差し引くと、手元に残るのは300万円。さらに、スカウトのためにキャバクラや風俗へ行くため、毎月100万円くらいの出費がある
こんな数字がリアルに計算されています。手元に200万円残ったとしても、女の子はすぐに辞めていきますし、諍いが起こったりすることを考えると、決して楽な商売とはいえないでしょう。神経が磨り減るような毎日だったでしょうね。
また、このエリアの写真撮影は禁止(組合の方が見回っているそうです)ですし、中からの情報発信などもほぼ行われていないため、世間とは隔絶された感のある飛田ですが、ちょっと問題が発生したりすると、ネットにあれこれと書かれてしまうため、そういった点では特に気をつけているのだとか。時代的にも場所的にも、周りから完全に独立しているようにすら見える飛田でも、そんなことがあるんですね(笑)
筆者は飛田の中にいた方ですから、割り引いて考える必要がありますが、後書きにあるこの言葉には真実味が感じられます。
「飛田以上に女の子を守っている風俗街はほかにはありません。組合が中心になり厳しく自治管理しているので、むしろここで働くほうがほかの風俗よりも安全であるといえるくらいです。そして、ずぶずぶと落ちていく子もいればきっぱりと抜け出す子もいますが、共通しているのは彼女たち自身がこの街を必要としているということです。こうした事実をまずは知ってほしいと思います。」
飛田が複雑で恐ろしい街であることは間違いありません。しかし、他の色街との違いも間違いなくあると思いますので、まずは一読してみるといいですね。