JINJA BOOK―神社本 ヒモロギイワサカヤオヨロズ
美しいビジュアルで神社の「神性」を伝える一冊。神社めぐりを始めたい方へ最適です!
2011年3月に発売された、いわゆる神社本。筆者さんが後書きに「パワースポット詣が流行り、中にはパワースポットと呼ばれる場所を訪れるだけでお参りもしない」という事態を嘆いていらっしゃるように、手に取りやすいポップな装丁とは裏腹に、内容は浮ついておらず、分かりやすく神社にまつわる人や物を紹介しています。
説明文:「日本津々浦々、なぜ8万もの神社が存在するのか? それぞれどのような神様を祀り、どのような伝承があるのか? あまりに身近過ぎて疑問に思うこともなかった神社についての基礎知識を意識するだけで、見るもの、感じるものが全然違ってくる。当然のように存在する神社に興味を持つことは、当たり前に過ぎていく毎日に感謝をすること。 より多くの人が神社について少しだけ詳しくなり、「パワースポット」という言葉以上の神社の魅力に気付いて欲しい。そんな想いから、この『JINJA BOOK』は生まれました。」
美しい画像を中心に、硬くなり過ぎない程度のテキストでそれぞれの神社の成り立ちなどが解説されています。このバランスが適度で、神社に興味を持ち始めた方にはもちろん、何箇所もお参りしてきた私のような者にとっても、境内の清々しさが伝わってくるようでした。
本書は大きく5つのパートに分かれています。「JINGU」伊勢神宮、「SHINWA」高千穂・戸隠・出雲、「HIKE」出羽三山・熊野・富士山、「MATSURI」お綱掛け神事・御柱祭・御燈祭り・全国お祭りマップとあり、そこに神社参拝の基礎知識のコーナーや、丁寧な御朱印の解説ページ(みうらじゅんさんんもちょっとだけ登場しています)などもあります。熊野や富士山を「神々を感じながら歩く(ハイク)」として分類していたりするのが面白いですね。決して難しくなり過ぎず、落ち着いたいい見せ方をしています。
また、驚いたのは、冒頭の伊勢神宮のページのすぐ後に、あの「世界のキタノ」北野武さんのインタビューが4ページ掲載されていることですね!私は昔からファンなんですが、北野さん、神社なんて興味ありましたっけ?…なんて思いながら見ていると、伊勢へ行ったばかりらしく、そこで感銘を受けてきたばかりなんだとか。さすがに発言内容も深く、ちょっと驚きました。
「『式年遷宮』の発想はすごいね。建築物を『生き物』として扱っている。人間と同じように、生まれて、死んで、また生まれて、を繰り返すわけでしょ。いつも『現代』を生きているんだよ」
「大事なのは、人間が宇宙とどう関わるかではなくて、宇宙そのものがどうあるかってこと。宇宙的な観点から見たとき、神道は分相応な発想をしていると思う」
『JINJA BOOK―神社本』14~17ページ 北野武インタビューより
全体として、神社が持つ「神性」を上手く伝えている一冊だと思います。テキストで長い歴史をつらつらと書き連ねるだけでは伝わらない空気感を、抑えたトーンでじんわりと感じさせる良書ですね。神社めぐりをしてみたいと思っている初心者の方には、こういう本から手にとって欲しいと思います。
ちなみに、私は図書館で借りたので実物は見ていませんが、付録としてオリジナルのご朱印帳がついていたのだとか。ビジュアル豊富な内容とはいえ、全101ページで1,710円はちょっと高いかも…と思っていたのですが、それなら納得ですね。