自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと
「何を捨てて、何を残すのか?」を説く一冊。中年世代にも響く言葉が見つかります
こういうものは自己啓発本というんだろうか?他の本についていい書評を書いていたとある方がこの本を勧めていて、偶然近くの図書館にあったので読んでみました。私はこの手の本にアレルギーがあって苦手なんですが、共感する部分も多かったですし、読んでみて良かったと思っています。
筆者は、以前は音楽プロデューサー業をやっていて、現在は大学で「ライフスタイルデザイン」を教えながら、学生時代からの夢だったニュージーランドに移住して釣り生活を楽しむ、いわゆるノマドライフを送っている方です。この生活を実現するために、とにかく「20代は捨て」というライフスタイルを説いています。
------
説明文:「今後の自分にプラスにならないと思ったものは、潔く捨てればいい。捨てれば捨てるほど、視界と思考からノイズが取り除かれ、 本当にやりたいことが明らかになるからだ。人生は余計なものを削ることで、自分らしさを取り戻していく。捨てれば捨てるほど、集中力が高まり、本当の能力が引き出される。(プロローグより)
「20代は捨て」。人付き合い、出世、競争、プライド、流行りなど、ほとんどを捨てて、最後に残った「あるもの」だけを大切にした。成長経済神話が崩壊し、「できるだけ多くのことを獲得することを良しとする時代」が終わった今、「なにを捨て、なにを残すのか?」が人生のクオリティをきめる。」
------
本書で捨てさることを勧めている項目は、ストック・出し惜しみ癖・衝動買い・服の選択肢・マルチタスク思考・ToDo・定時・バランス感覚・深夜・満腹・言葉の汚れ・根性・雑音・人脈・ライバル心・照れ・会社への忠誠心・あきらめ・成功例など、50項目です。
いずれも3ページずつ、シンプルで刺さる言葉で語られていて、心に残りますね。
私には「禅」の教えに近いようにも思えました。生活をシンプルに、ミニマムに、自由に維持することの難しさと楽しさが伝わってきます。書かれている項目の1割くらいは首を傾げましたが、6割くらいは強く共感できましたから、こんなひねくれた中年が読んだにしては奇跡的な共感率です(笑)
筆者さんのプロフィールを調べてみると、私と年齢が一個違い(1970年生まれ)と、世代的に近いこともあってか、近しいものを感じるのかもしれません。年を取ってくると、自分の生活にいかに無駄が多いのか、なかなか気づきづらくなっているものです。現状を維持するだけでもとんでもない労力が必要な世の中ですから、仕方ないことではありますが、より生活をミニマムにする努力だけは忘れないようにしたいですね。
ただし、この本を20代の方たちが読んだ場合、そのまま受け入れるのは簡単なことではないでしょう。何でも吸収したい、そしてそれが役立つかもしれない…と考えている年代ですから、スポンジのように何でも吸い上げる柔軟性とパワーがあるだけに、無駄遣いしがちです。それが無駄だったと分かるのは、何年か経ってからのこと。よほど意識的に生きなければ余計な荷物ばかり背負い込んでいるでしょう。
この本が20代の方々にどこまで響くかは分かりませんが、30代・40代こそが読んでみる本なのかもしれないとは思います。
個人的に心に留めておきたい点だけをメモ代わりに。
■「お金から自由になるために、“ミニマム・ライフコスト”という発想を持とう」(P53「生活レベルの向上という発想を捨てる」より)
使えるお金が増えると生活レベルを上げてしまいがちだけど、生活の最低の最低限のランニングコストを把握して、それをキープするのは重要。身軽になるために。
■「“自分の欲求”を惜しげもなく出そう。初対面でもいいから、誰かに会ったら伝えてみよう。」(P172「照れを捨てる」より)
これを続けていた筆者は、いつか「営業の●●君」ではなく、「なぜかニュージーランドに行くのが夢だと言いまくっている●●君」と覚えられるようになり、出会いが広がったとか。いい年になると、照れくさくて自分をセーブしがちですが、これは必要。そして自分に一番欠けている部分でもあるなと。
■「なかなかイライラが収まってくれなかったら、いっそ次の休みにどれくらい遠くまで歩けるか試してみよう。」(P114「言葉の汚れを捨てる」より)
いいね!これはぜひ取り入れよう!
こういった本は何冊も読むとアホになりますから(読んだだけで出来る人間になったと勘違いします)、共感できるものだけを手元において、気が向いた時にパラパラッと読みなおすといいですね。そういった意味でも、こんな本こそ電子書籍化してくれればいいんですが、残念ながらまだ発売されていないようです。その点は残念!